帝国データバンクは、企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)などを用いて 2021年の国内IPO市場の動向について集計・分析した。その結果によると、2021年のIPO社数は125社と、前年の93社から32社増加し、2007年の121社以来14年ぶりに100社を上回った。国内株式指標の堅調な推移に加え、2022年4月の東京証券取引所における市場再編を前に駆込み的に新規上場が行われていることも一因と考えられている。
また、前年に新型コロナウイルスの感染拡大による影響で新規上場を見送った複数の企業がIPOを果たしたほか、アメリカの2022年の利上げ前の駆込み上場が要因の一つといった見解もある。IPOを行った企業からは、「東京五輪の開催もあり、2020年に上場することを検討していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、1年後の2021年となった」(ユミルリンク(株))といった声が聞かれた。
業種別にみると、「ソフト受託開発」や「パッケージソフト」など『情報サービス』が36社で最も多くなった。企業の情報活用を促進するソフトウェアやクラウドサービスを手掛けるウイングアーク 1st(株)や、製造業・建設業を中心としたデジタルトランスフォーメーション(DX)実現支援やIT人材調達支援サービスを提供する(株)コアコンセプト・テクノロジー、企業向けシステム開発を手掛ける(株)ラキールなどが含まれる。
さらに、再生可能エネルギー事業や省エネ対策システムを手掛けるリニューアブル・ジャパン(株)やWEBマーケティング戦略による集客支援サービスや海外IT人材と企業とのマッチング、AI技術開発などでサービスを提供する全研本社(株)など『その他サービス』(15社)が続いている。また、グループ会社の経営管理業を行う持ち株会社といった「その他の投資業」が含まれる『金融』(15社)も多くみられる。
総じて、新型コロナウイルスの感染拡大にともなうデジタル・IT関連サービス需要の急拡大を背景に、デジタルおよびITテクノロジーを活用するテック企業の新規上場が目立ち、2011年と比べて4倍となっている。経営環境の急激な変化を背景に2011年にみられなかった経営コンサルタント事業も12社新規上場を果たした。一方で、不動産業や製造業の IPO社数は減少している。
なお、2021年のIPO企業の設立から上場までの期間は「18.8年」で、2011年の「21.9年」と比べて3.1年短縮した。その原因として、設立から事業化・商品化までの期間が比較的短い IT関連企業の割合が大きくなった一方、ある程度の時間を要する製造業の割合が小さくなったことが言える。社長の平均年齢は50.3歳と前年から1.4歳低下した。年代別にみると、「50代」が最も多く全体の42.4%を占めている。
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