日本政策金融公庫が、同公庫の融資を受けて2016年に開業したと想定される企業を対象に実施した「新規開業パネル調査」結果(有効回答数1877社)によると、調査対象企業のうち、2020年末まで存続した企業の割合は89.7%、廃業した企業の割合は8.9%だった。業種別に2020年末までに廃業した企業の割合をみると、「飲食店、宿泊業」が14.7%と最も高く、次いで「小売業」が13.2%、「不動産業」が12.1%となっている。
経営者の1ヵ月当たりの事業からの報酬は、2016年末は平均27.4万円と開業直前の収入の平均35.9万円を下回る。その後、2017年末35.5万円、2018年末38.9万円、2019年末54.7万円と徐々に増えているが、2020年末は48.8万円にやや減少。経営者の1週間当たりの就業時間は、いずれの年も「55時間以上」が最多だが、その割合は2017年末の51.2%をピークに2018年末50.9%、2019年末48.2%、2020年43.2%と低下している。
業況をみると、「やや良い」の割合が、2016年末の44.5%から2019年末は54.6%と高くなり、「やや悪い」が43.3%から35.2%と低くなっている。ただし、2020年末はそれぞれ2016年末と同水準の42.2%、44.4%に戻っている。採算も同様に2016年末から2019年末にかけて「黒字基調」の割合が50.9%から76.1%へと高くなっているが、2020年末には62.8%に低下した。
第5回調査(調査時点は2020年12月末)における新型コロナウイルス感染症によるマイナスの影響の有無は、「現在、大いにある」が36.6%、「現在、少しある」が28.6%で、以前に影響があった企業を含めると86.0%の企業が影響を受けている。業種別にマイナスの影響を受けた割合をみると、「飲食店、宿泊業」が97.5%と最も高い。「教育、学習支援業」(96.6%)、「運輸業」(92.4%)、「製造業」(91.7%)も9割を超えている。
新型コロナウイルスに関する補助金等と特別融資を利用した企業の割合は、83.9%の企業が「補助金等」を利用。特別融資については、「日本政策金融公庫」から借り入れた企業が44.2%、同じく「民間金融機関」が24.9%、いずれかの特別融資を利用した企業の割合は58.1%となる。業種別では、補助金等を利用した割合が最も高いのは「飲食店、宿泊業」(97.5%)、同じく特別融資は「卸売業」(82.4%)である。
収入の満足度は、「大いに満足」と「やや満足」を合わせた「満足」と、「やや不満」と「大いに不満」を合わせた「不満」を比べると、2016年末はそれぞれ25.1%、40.8%と、「不満」のほうが多い。2017年以降も「不満」のほうが多い傾向は変わらない。仕事のやりがいの満足度は、2016年末の「大いに満足」と「やや満足」を合わせた「満足」は87.3%と非常に高い。その後「満足」の割合は徐々に低下しているが、2020年末でも64.6%と高い。
同調査結果は↓