国税庁はこのほど、今年3月の最高裁判決を踏まえた剰余金の混合配当の取扱いを公表した。最高裁判所は、2021年3月11日判決において、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当(「混合配当」)が行われた場合における「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算方法の規定について、一定の限度において、違法なものとして無効である旨判示した。
同判決では、混合配当は、その全体が法人税法に規定する資本の払戻しに該当と解釈。株式対応部分金額の計算方法を定める法人税法施行令の規定のうち、資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は、混合配当につき、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、法人税法の趣旨に適合せず、同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効と判示した。
同判決を受け、混合配当に係る株式対応部分金額の計算方法が、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、違法として無効である旨判示されたことから、現行の法人税法施行令23条1項4号及び同様の規定である所得税法施行令61条2項4号について、同判決に従い、混合配当があった場合に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限として取り扱うとした。
上記の取扱いは、過去に遡って適用されるので、この取扱いにより直前払戻等対応資本金額等の再計算を行った結果、過去に行った申告内容等に異動が生じた株主等について、納付税額等が過大となる場合には、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求を行うことができるとした。また、更正の請求をする場合には、上記の申告内容等の異動事項が分かる書類を併せて提出することを求めている。
なお、法定申告期限等から5年を経過している法人税又は所得税については、法令上、減額更正を行うことはできないこととされているので、注意が必要となる。