政府主導の「官製春闘」が5年目を迎えたが、東京商工リサーチが発表した「2018年度賃上げに関するアンケート調査」結果(有効回答数7408社)によると、回答企業のうち「賃上げを実施した」企業は全体の8割強(構成比82.2%)を占めた。規模別では、大企業(資本金1億円以上)では「賃上げを実施した」が84.6%、一方、中小企業は81.8%と、賃上げ実施は、大企業が中小企業を2.8ポイント上回った。
賃上げ内容(複数回答)は、最多が「定期昇給」の78.7%、「ベースアップ」が43.8%、「賞与(一時金)の増額」が37.4%で続く。「定期昇給」(大企業82.8%、中小企業78.0%)と「ベースアップ」(同44.1%、43.7%)は、大企業と中小企業に大きな差はなかったが、「新卒者の初任給の増額」(同25.8%、15.2%)で、10.6ポイントの大差が出た。内部留保に余裕のある大企業は、人材確保のため初任給の賃上げに積極的に取り組んでいる。
賃上げした理由(複数回答)では、「雇用中の従業員の引き留めのため」が50.8%と過半数を占めた。構成比は、「業績が回復したため」が大企業37.7%、中小企業37.2%と拮抗したが、「雇用中の従業員の引き留めのため」は大企業の42.2%に対し、中小企業は52.1%と9.9ポイント上回った。「在職者の離職を防ぐ」ための賃上げが中小企業で5割以上となり、これは中小企業ほど、人手不足が深刻な状況の裏返しと受け取れる。
賃上げを実施した効果(複数回答)は、「従業員のモチベーションが上がった」が59.9%で最多、次いで、「従業員の引き留めに成功した(離職率が低下)」(16.9%)、「入社希望者が増えた」(5.7%)と続く。「特に効果はなかった」も約3割(29.5%)あったが、全体では約7割の企業が賃上げ効果を実感している。「従業員の引き留めに成功した(離職率が低下)」は、大企業14.6%、中小企業17.2%で、中小企業が2.6ポイント上回った。
「賃上げを実施していない」企業は全体の15.4%だったが、その理由(複数回答)は、最多が「景気の見通しが不透明であるため」(40.3%)、次いで、「業績低迷」(33.9%)だった。大企業は「人件費増加を抑制するため」(33.1%)が最多、「景気の見通しが不透明」(29.1%)、「業績低迷」(27.7%)と続く。一方、中小企業は「景気の見通しが不透明」(41.8%)が最多、「業績低迷」(34.7%)、「財務体質の強化を優先したため」(29.4%)と続く。
同調査結果は↓
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180705_01.html