デロイトトーマツが発表した2021年上期IPO市場の動向によると、同期間の国内IPO企業数は59社(TOKYO PRO Marketへの上場6社を含む)となり、2020年上期の39社(同5社を含む)から更に増加する結果となった。株式市場は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、ワクチン接種への対応や経済対策等により、経済回復の期待から堅調に推移。IPO企業数も2007年上期(73社)以来の高い水準で推移している。
国内IPO市場は引き続き活況といえるが、市場別にみると、2021年上期の「マザーズへ」のIPO企業数は37社、全体に占める割合は63%と引き続き高い水準で。また、「JASDAQ」へ上場する企業数は前年上期の5社から11社に大幅な増加をしている。「東証本則」へ上場する企業数は5社であり、前年上期の6社から大きな変動はない。なお、「TOKYO PRO Market」では6社の上場があった。
2021年上期にIPOした企業を業種別にみると、「情報通信業」21社、「サービス業」13社となり、2業種合計では34社と全体の58%を占めている。代表的な情報通信業では、会員制転職プラットフォーム「ビズリーチ」を提供する「ビジョナル(株)」やマーケティングとセールスの領域でAIプラットフォームを提供する「Appier Group(株)」があり、初値時価総額ではいずれも2000億円を超えるIPOとなった。
また、初値と公開価格の倍率が高かったIPO企業は、上位3社はいずれも情報通信業であり、革新的な技術やサービスの提供が期待される企業やWith/Afterコロナの影響を踏まえた成長が期待できるビジネス等に対する投資家の期待が高い傾向にあった。一方で、初値が公開価格を下回った公開価格割れのIPO企業は、新型コロナ感染症拡大による株式市場の混乱の影響を受けた2020年が突出し、2021年上期は、4社と大幅に減少している。
公募金額及び売出し金額を合計した発行総額レンジ別にみると、2021年上期の特徴として、発行総額100億円以上のIPO企業数は10社となっており、2019年通期の9社、2020年通期の8社に対して、IPO全体に占める割合は18.9%に上昇している。2019年以降、発行総額10億円未満の比較的中小規模のIPOが増加している傾向にあったが、2021年上期は発行総額レンジが全体的に高まっている。
過去のIPO企業の業績を踏まえると、上場直前期に当期純損失を計上している企業や上場申請期に当期純損失を予想している企業が増加傾向にある。2021年上期においては、上場直前期の当期純損失を計上した企業は11社(TOKYO PRO Marketの1社を含む)あり、過去の状況と比べると高い水準にある。また、上場申請期においても当期純損失の業績予想をしている企業は4社となっている。
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