東京商工リサーチが発表した「上場企業の継続企業の前提に関する注記調査」結果によると、2021年3月期決算(2020年4月~2021年3月)を発表した上場企業2395社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(GC注記)を記載した企業は26社だった。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」は63社だった。
2021年1月に事業再生ADRの手続きが成立した電子機器受託のユー・エム・シー・エレクトロニクス(株)(東証1部)など3社のGC注記が外れ、不動産リノベーション事業の(株)イントランス(マザーズ)としゃぶしゃぶ大手の(株)木曽路(東証1部)が、初めてGC注記を記載した。また、重要事象の記載企業63社のうち、14社は中間決算では重要事象を記載していなかったが、本決算で記載した。
GC注記と重要事象を記載した企業数は合計89社にのぼり、リーマン・ショック後の2012年3月期(89社)以来、9年ぶりの水準。さらに、中間決算でGC注記・重要事象を記載し、決算発表を延期している3社を加えると、90件を上回る可能性が高い。GC注記・重要事象の記載企業89社を理由別に分類すると、82社(構成比92.1%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。
次いで、「新型コロナによる悪影響」を理由としたのが46社(同51.6%)と半数を超えた。以下、「財務制限条項に抵触」15社、「資金繰り悪化・調達難」13社、「債務超過」11社。 また、GC注記・重要事象の記載企業89社の業種別は、「製造業」が30社(構成比33.7%)で最多。以下、「サービス業」が20社(同22.4%)、外食業者16社を含む「小売業」が19社(同21.3%)と、上位3業種で69社(同77.5%)に達し、全体の約8割を占めた。
新型コロナを要因の一つとした46社の業種別では、「小売業」が17社(構成比36.9%)で最多。このうち、外食産業が16社を占めた。次いで、「サービス業」が14社(同30.4%)で続き、ホテルやレジャー施設運営など観光関連の事業を手掛ける企業への影響の大きさを反映している。また、市況低迷のあおりを受けて業績悪化に影響した「製造業」が9社(同19.5%)、航空会社など「運輸業」が2社(同4.3%)と続く。
同調査結果は↓