東京商工リサーチが発表した「全国新設法人動向調査」結果によると、2020年の新設法人は、13万1238社(前年比0.1%減)で、2018年以来、2年ぶりに前年を下回った。2020年の休廃業・解散は4万9698社(同14.6%増)、倒産は7773社(同7.2%減)だった。コロナ禍で休廃業・解散による企業の市場からの退出が増加し、新設法人数も減少した。経済の活性化には企業の「新陳代謝」が不可欠だが、「代謝」が先行する事態に陥っている。
2020年の新設法人で最も多かった商号は、「LINK」の51社(前年30社)。「結びつき」や「連結」、「絆」などを意味しているとみられる。2位は46社で「アシスト」(同45社)、3位は「NEXT」の44社(同32社)、4位は「トラスト」(同40社)と「エイト」(同25社)でそれぞれ36社、6位は「ONE」の35社(同26社)の順。前向きで未来志向、親和性、独自性を重んじる商号が並ぶ。
産業別では、10産業のうち、6産業が前年より増加、4産業が減少した。増加率トップは、「情報通信業」の7.6%増(1万2223社→1万3154社)。金融機関や大手企業でIT投資が続くほか、中小企業でも生産性向上への投資を見越した動きやコロナ禍で加速したリモートワーク需要も背中を押したとみられる。また、コロナ禍でネット通販が活発で市場が拡大した「運輸業」は3.3%増(2510社→2593社)だった。
一方、前年に増加率トップ(5.7%増)だった「建設業」は0.6%減(1万1414社→1万1341社)と減少に転じた。コロナ禍で資材流通の混乱や感染防止による現場進行の遅れもあったが、民需停滞の影響なども反映した可能性がある。また、「サービス業他」は2.6%減(5万7607社→5万6052社)。設立数は5万社を超え、他を大きく引き離してトップで、新設法人の42.7%を占めるが、コロナ禍が直撃した業種だけに今後の動向が注目される。
産業を細分化した業種でみると、2020年の設立数が100社以上で、最も減少率が大きかったのは「宿泊業」の32.2%減。また、「繊維・衣服・身の回り品小売業」は17.7%減、「飲食業」は12.7%減で、コロナ禍が直撃した業種の減少率が大きい。一方、増加率が最も大きかったのは、「各種商品小売業」の38.8%増だった。コロナ禍で激変した消費行動に商機を見出し、新たな商流をキャッチアップしようとする動きが広がっているようだ。
法人格別の社数は、株式会社が8万6620社(前年比2.6%減)で、全体の66.0%を占めた。増加が続く合同会社は、3万3287社(同10.1%増、構成比25.3%)で、初めて3万3000社を超えた。合同会社は、設立コストが安く、株主総会も不要など、経営の自由度が高く、メリットが浸透してきたようだ。一方、特定非営利活動(NPO)法人は1342社(同15.0%減)、医療法人は1161社(同13.8%減)と大幅に減少した。
同調査結果は↓