首都圏の企業の「転入超過」8社と過去10年で最少

 2020年は、Web会議など従業員が場所を選ばず働く基盤の整備が急ピッチで進んだ一方、大手企業を中心に東京都心のオフィス面積縮小や本社機能の地方移転といった動きが相次いだ。帝国データバンクがこのほど発表した「首都圏・本社移転動向調査」結果によると、2020年に本社移転を行った企業は、全国で1979社にのぼった。前年から32社減少したほか、リーマン・ショックの発生した08年(2105社)以降で最も少なかった。

 このうち、首都圏(1都3県:東京・神奈川・千葉・埼玉)に転入した企業は 296社となり、3年ぶりに前年を下回った。一方、首都圏から転出した企業は288社となり、2年ぶりに増加したほか、東日本大震災が発生した2011年以降で最多だった2012年(287社)を上回り、過去10年で最多を更新した。この結果、首都圏は2011年以降10年連続で企業の転入が転出を上回る「転入超過」となった。

 ただ、転入超過は8社にとどまり、ピークの2015年(104社)と比較して10分の1以下となったほか、転入超過の社数としては統計開始の1990年以降で最も少ない結果となった。企業の首都圏流入の動きは依然として続いたが、転入超過は2019年から一転して大幅に減少するなどトレンドに変化もみられる。転入元は「大阪府」(56社)、「愛知県」(26社)、「静岡県」(20社)、「北海道」(19社)、「茨城県」(18社)の順で多かった。

 大阪府からの転入は前年に比べ10社減少、愛知県は8社減少した。昨年3位(25社)だった福岡県は9社にとどまり、前年から大幅に減少した。一方、転出先は40道府県にのぼり、最も社数が多いのは「大阪府」(36社)、以下、「静岡県」(30社)、「茨城県」(29社)、「愛知県」(16社)、「福岡県」(14社)の順。転出先は前年と同様、大都市圏と茨城県などのほか、首都圏と地理的に近接する地域に比較的限定された。

 首都圏への転入企業で、最も多いのは「サービス業」の115社だった。7年連続で100社を超える水準だったものの、前年を6社下回り、2年ぶりの減少となった。次いで、「卸売業」(50社)、「製造業」(39社)、「小売業」(32社)が続いた。転出企業で最も多かったのは「サービス業」の96社。前年から3社減少し、2017年(114社)をピークに3年連続で減少した。次いで「卸売業」の62社、「製造業」の51社と続いた。

今後は、新型コロナの対策以外にも想定される首都直下型地震など災害面でのリスクヘッジから、首都圏以外への本社機能分散やバックアップ拠点の確保といった動きが今以上に本格化するとみられる。そのため、2021年は特に本社所在地を選ばないサービス業などの企業を中心に首都圏からより離れた地域への本社移転の動きが加速することが見込まれ、首都圏は11年ぶりとなる企業の転出超過に転じる道筋が見えてきた。

 同調査結果は↓

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210410.html