新型コロナ感染拡大に伴う政府の緊急避難的な資金繰り支援策で、2020年度(20年4月~21年3月)の企業倒産(負債1000万円以上)は7163件(前年度比17.0%減)と大幅に抑制された。そうしたなか、東京商工リサーチが発表した「後継者難の倒産状況調査」結果によると、2020年度の『後継者難』倒産は、354件(前年度比10.9%増)だった。調査を開始した2013年度以降では、2019年度の319件を抜き、最多件数を更新した。
代表者の平均年齢は年々上昇をたどり、2019年の平均年齢は62.16歳(前年61.73歳)と高齢化が顕著になっている。代表者が高齢で経営不振の企業の多くは、後継者の育成に手が回らず、設備投資や中長期の経営課題への取組みも後手に回り、これが成長を阻む要因にもなっている。また、代表者が経営全般を担う企業では、代表者の健康問題が経営に影響を及ぼすケースが増加している。
2020年の休廃業・解散は、倒産の7773件を凌ぐ過去最多の4万9698件発生。このうち、黒字企業は全体の6割(61.5%)を占めた。コロナ禍で先行きが不透明なだけに、黒字企業でも事業承継や後継者問題が経営上の大きなリスクになっている。2020年度の『後継者難』で倒産した354件のうち、代表者の死亡は168件、体調不良は127件だった。この2要因で295件に達し、『後継者難』倒産の8割以上(構成比83.3%)を占めた。
金融機関は、中小企業の支援に際し、企業の将来性を判断する「事業性評価」を重視しているが、事業性評価では後継者の有無が大きな判断材料の一つ。多くの中小企業では、代表者が経理から営業、人事など、あらゆる業務を担いがちだ。さらに、金融機関からの資金調達では個人保証することも少なくない。このため、代表者の病気や体調不良などの健康問題は経営や資金繰りに直結しやすく、事業継続の大きな経営リスクになっている。
産業別でみると、10産業のうち、「情報通信業」「サービス業他」を除く8産業で、前年度を上回った。最多は、「建設業」の75件、次いで、「サービス業他」が74件、「卸売業」が60件、「製造業」が58件、「小売業」が39件の順。業種別(件数10件以上)では、繊維・衣服等卸売業14件(前年度比133.3%増)、機械器具小売業13件(同62.5%増)、飲食料品卸売業18件(同50.0%増)、飲食業25件(同8.6%増)などで増加した。
資本金別では、1000万円未満(個人企業他を含む)が195件(前年度比4.2%増)で、4年連続で前年度を上回った。『後継者難』倒産に占める構成比は55.0%となり、4年連続で構成比が50%を超えた。1千万円未満の内訳は、「100万円以上500万円未満」が95件(構成比26.8%)、「500万円以上1000万円未満」が55件(同15.5%)、「個人企業他」が35件(同9.8%)、「100万円未満」が10件(同2.8%)だった。
同調査結果は↓