大阪シティ信用金庫が発表した「中小企業における2021年の賃上げ動向調査」結果(有効回答数1132社)によると、今年の府内企業の正社員の賃上げ実施状況(実績・予定)は、「賃上げ実施」企業は16.0%で、昨年に比べ4.6ポイント減少した。これに対し、「賃上げを見送り据え置く」企業が77.5%で圧倒的に多く、昨年より0.7ポイント増加。また、「賃下げ実施」企業は6.5%で、昨年より3.9ポイントの増加となった。
賃上げ実施企業は、2000年以降で最高の水準となった2019年(34.8%)から2年連続で減少し、リーマン・ショック後の2011年(12.4%)以来の低水準となった。長引くコロナ禍による自社業績への懸念が強まり、賃上げに慎重な企業が増加したものとみられる。業種別でみると、「賃上げ実施」企業割合は、「サービス業」(20.1%)や「建設業」(19.9%)で比較的高いのに対し、「小売業」(8.1%)で低くなった。
「賃上げ実施企業ベース」の平均賃上げ率は2.88%で、昨年より0.11ポイント減少。平均賃上げ率の低下は3年ぶり。これを、賃上げをしない企業を含む「全企業ベース」でみると、平均賃上げ率は0.13%で10年連続プラス域。業種別の賃上げ実施企業ベースの平均賃上げ率は、「サービス業」(3.17%)、「卸売業」(3.15%)、「建設業」(3.14%)で3%台となる一方、「小売業」(1.81%)や「運輸業」(1.91%)で低く、業種間で差異がみられる。
賃上げ率(額)を決める基準は、「あくまでも自社業績のみ」とする企業が昨年比0.2ポイント増の74.1%と7割を超え、圧倒的に多い。次いで、「自社業績をベースに、他社や世間相場を考慮」とする企業(22.6%)が約2割あり、「他社や世間相場を重視し、自社業績を加味」とする企業(3.3%)はわずかだ。これら他社や世間相場を考慮・重視する企業は25.9%と4社に1社程度だった。
賃上げをする最大の理由は、最も多いのは「雇用の維持や従業員の士気高揚のため」で、昨年比5.8ポイント減の54.7%となり、過半を占める結果となった。これに対し、「業績の向上・回復を反映して」とする企業は39.8%で、同7.3ポイント増加した。中小企業の賃上げ理由は、2011年以降「業績の向上」が最も多かったが、人手不足感の高まりによる雇用の維持・確保の必要性から、2019年に「雇用の維持」が入れ替わりトップになった。
同調査結果は↓https://www.osaka-city-shinkin.co.jp/houjin/pdf/2020/2021-03-18.pdf