信金中央金庫は、このほど発表した産業企業情報で、新型コロナ感染拡大の裏に潜む中小企業の人手不足問題を取り上げ、ダイバーシティ推進と生産性向上を求めた。通常、人手不足判断DIは、業況判断DIとは逆相関(業況が良くなると人手不足感が強まり、業況が悪くなると人手不足感が弱まる)の関係にあるが、今回のコロナショックでは、業況がリーマンショック時並みに悪化したのに対し、人手はいまだに不足感が残っていると指摘した。
統計的な手法を用いて検定した結果、アベノミクスによる積極的な財政・金融政策が本格化し、景気拡大局面にあった2014年から2017年にかけて、人手不足と業況との関係に構造的な変化が生じ、業況にかかわらず人手不足が進んでいったことが確認できた。2017年以降は、人手不足と業況の関係は従前の傾向に戻ったものの、2014年以前と比較すると極めて人手不足な状況が続いている。
2014年以降、人手不足が進んだ背景として、4つの要因が挙げられる。1点目にアベノミクスにおける需要喚起策、2点目に労働市場において、中核人材としての活用が限定的である女性や高齢者が増加する一方で、これまで企業で中核とされてきた生産年齢人口の男性が増加しなかったこと、3点目に企業側におけるダイバーシティの遅れ、4点目に設備投資が進まなかったことによる生産性向上の遅れを挙げた。
今後、コロナ禍から立ち直っていく過程で、2018年から2019年にかけて起こったバブル期以来の深刻な人手不足が再燃する可能性がある。加えて生産年齢人口、労働力人口の減少を踏まえると、中小企業においてはダイバーシティや生産性向上を進めることが望まれる。信用金庫においても、人材紹介業務や補助金活用による生産性向上などを通じて、中小企業の人手不足に対し、積極的な支援をしていくことが求められるとしている。
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