『後継者難』倒産、20年度の2月までで311件と急増

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2020年度『後継者難』の倒産状況調査」結果によると、2020年度(20年4月~21年3月)の企業倒産(負債1000万円以上)は2月までの11ヵ月間で6529件(前年同期比▲17.2%減)と大幅に抑制されているが、『後継者難』倒産は、同期間で311件(前年同期比10.6%増)と急増し、調査を開始した2013年度以降、年度最多の2019年度(319件)を超えることが確実になった。

 金融機関は中小企業の支援に際し、企業の将来性を判断する「事業性評価」をより重視するようになっているが、事業性評価では後継者の有無は大きな要素になっている。多くの中小企業は、代表者が経理や営業、人事など、あらゆる業務を担うことが多く、特に、資金調達面では個人保証しているケースが少なくない。このため、代表者の病気や体調不良が、経営や資金繰りに直結するなど、事業継続が大きな経営リスクになっている。

 『後継者難』倒産の要因別では、最多が代表者などの「死亡」の147件(前年同期比16.6%増、構成比47.2%)。次いで、「体調不良」112件(同13.1%増、同36.0%)、「高齢」27件(前年同期33件)と続く。代表者などの「死亡」と「体調不良」の合計は259件(前年同期225件)で、『後継者難』倒産に占める構成比は83.2%と、8割を超えた。中小企業では代表者の高齢化が進んでおり、事業承継や後継者の育成が経営課題になっている。

 産業別にみると、10産業のうち、「情報通信業」、「サービス業他」を除く8産業で、前年同期を上回った。最多が「建設業」の70件(前年同期比22.8%増)、次いで、「サービス業他」64件(同▲4.4%減)、「卸売業」53件(同15.2%増)、「製造業」44件(同10.0%増)、「小売業」35件(同6.0%増)の順。業種別(件数10件以上)では、「繊維・衣服等卸売業」(同116.6%増)、「飲食料品卸売業」(同70.0%増)などで増加した。

 負債額別でみると、負債1億円未満が217件(前年同期比2.3%増)だった。『後継者難』倒産に占める構成比は69.7%(前年同期75.4%)と、約7割が小・零細規模だった。また、資本金別では、1千万円未満(個人企業他を含む)が173件(前年同期比2.9%増)だった。『後継者難』倒産に占める構成比は55.6%(前年同期59.7%)で、前年同期より4.1ポイント低下している。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210308_03.html