不動産の売却はその対価が多額になることから、消費税の負担への影響が大きくなる。土地・建物を売却した場合、建物は消費税の課税対象だが、土地は非課税となっている。ただし、自宅などの非業務用の建物は、たとえ課税事業者であっても、消費税は課税されない。問題となるのは、貸家やアパート、店舗などの建物である事業用不動産の売却だが、ここでも消費税が課税されるのは課税事業者のみとなる。
免税事業者に該当する場合は、その対価がどんなに大きくても、売却に係る消費税の負担は生じない。しかし、注意したいのは、売却した年以降の消費税に影響を及ぼすことだ。免税事業者が業務用建物を売却した結果、その年の課税売上高が1000万円を超えた場合には、翌々年に課税事業者となるので、翌々年に何らかの課税売上があった場合には、その分に消費税が課税されることになる。
さらに留意しておきたいのは、不動産会社に対して成功報酬として支払う「仲介手数料」だ。これについては、土地売買・建物売買ともに消費税が発生する。土地取引に消費税がかからないことから、土地の仲介手数料には消費税がかからないと勘違いする向きは少なくない。仲介とは、不動産会社が付加価値を生んでいるサービスになり、仲介という商品のサービス料が仲介手数料であるため、仲介手数料には消費税がかかるのだ。
また、課税事業者でも免税事業者でもない非課税事業者の個人でも、アパートやマンションなどの住居系の収益物件を売る場合、建物価格が1000万円を超えると2年後に課税事業者となる。アパートや賃貸マンションは、賃料に消費税が発生しないため課税売上とはならないことから、ほとんどが課税事業者となっていないが、賃貸マンション等の収益物件は事業用不動産であるため、売却すると消費税の課税売上の対象となる。
賃貸マンションの価格のうち、建物価格が1000万円を超えてしまうと、翌々年に課税事業者となり、翌々年になんらかの課税売上があった場合、その課税売上に対して消費税の納税義務が発生する。例えば、2019年中に1000万円以上で収益物件を売却した場合、2021年に課税事業者となり、たとえ2021年の課税売上が1000万円以下であっても、その時点では課税事業者なので消費税の納税義務があるということになる。
なお、免税事業者が事業用不動産を売却する場合には、相手方に消費税を請求していいのか疑問が生じる向きもあろうが、免税事業者との取引であっても課税取引であれば消費税自体は発生するし、買い手側が課税事業者であれば、支払った消費税を仕入税額控除として計算することになる。そのため、免税事業者であっても、建物の売価に係る消費税を請求することが一般的だ。もちろん土地の売価部分は、非課税取引なので消費税は請求できない。