日本総研はこのほど、「深刻さ増す中小飲食店の経営難」と題したレポートを発表し、協力金制度の見直しで経済への影響緩和を、と提言している。レポートによると、2度にわたる緊急事態宣言の発動で、わが国の飲食店は、深刻な経営難に直面している。仮に、3度目の宣言が発動されるなど、さらなる営業制限が課せられると、多くの飲食店で経営の行き詰まりが表面化するとの懸念を示している。
特に行き詰まりが顕著となるのは「零細でない中小飲食店」である。具体的には、資本金で「1千万円から1億円」、従業員数で「10人程度から数百人」、売上で「年間1億円から数十億円」というカテゴリー。このクラスの企業で破綻が顕在化しうる背後に、「協力金」の恩恵が及ばないという事情がある。中小企業とはいえ、このクラスの規模になると1日6万円の協力金では経営を到底維持できない。
もう一つの問題は、「零細でない中小飲食店」は借入れ余力が小さいという点。厳しい状況にありながら営業を継続できた理由の一つとして、金融機関の積極的な支援があるが、今後、営業が再び制限される事態に陥った場合、こうした姿勢が維持されるか予断を許さない。今後、何らかの営業制限が発動された場合、追加的な与信に二の足を踏む金融機関が現れる可能性は否定できず、運転資金などの追加的な借入れも困難化しよう。
このような「零細でない中小飲食店」は、飲食業全体で5割程度の売上シェアを占めており、有利子負債は3兆円、従業員は130 万人にのぼる。昨年の倒産企業の負債総額が全産業で1.2 兆円、経済全体の失業者が190万人だったことを踏まえると、これら飲食店の経営難は、経済全体に無視しえない悪影響を及ぼす。これまで経営難に陥った企業を支えてきた持続化給付金や家賃支援給付金は2月で受け付けを終了した。
雇用調整助成金の特例措置は継続しているが、支給対象は休業者。休業者はすでに減少しており、助成金が経営を支援する効果は薄れている。そして、現行の協力金は零細企業には過剰な支援となっているのに対し、一定規模の企業にとっては損失を賄うには足りていない。今後の感染再拡大に備えるためにも、一律定額の協力金を企業規模に応じた給付に見直して、「零細でない中小飲食店」の破綻を回避していく必要があると提言している。
同レポートの全文は↓
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/12430.pdf