業歴30年以上の“老舗”企業の構成比は32.5%

 東京商工リサーチがこのほど発表した「業歴30年以上の“老舗”企業倒産調査」結果によると、2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年(前年23.7年)で、2年連続で前年を下回った。全倒産のうち、業歴30年以上の“老舗”企業の構成比は32.5%で、前年から0.1ポイント上昇した。一方、業歴10年未満の“新興”企業の構成比は27.4%で、前年を0.7ポイント上回り、4年連続で過去最高を更新した。

 同調査は、2020年に倒産した7773件のうち、業歴が判明した6591件を対象に分析したもの。業歴30年以上の“老舗”企業の構成比は2011年から10年連続、30%以上で推移している。“老舗”企業は、長年の事業経験に加え、金融機関や取引先とのパイプは太い。新型コロナ感染拡大など不測の事態への対応力は備えているが、一方で過去の成功体験に囚われ、外部環境の変化への柔軟性が欠ける企業も少なくない。

  さらに、代表者が高齢化の場合、業績が悪化傾向をたどる企業が多く、事業承継や後継者問題などで倒産や休廃業を決断するケースも増えている。一方、業歴10年未満の“新興”企業の倒産構成比は27.4%で、4年連続で過去最高を更新した。政府の創業支援を背景にしながら、ずさんな経営計画による創業も少なくない。経営基盤の脆弱さ、業績の低迷に加え、コロナ禍の厳しい事業環境への耐性の弱さを露呈した格好となった。

  2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年だが、産業別では、10産業のうち、小売業、金融・保険業、運輸業、サービ業他の4産業で平均寿命が延びた。平均寿命の最長は、「製造業」の33.4年で、前年より1.5年縮小し、2010年(27.6→26.1年)以来、10年ぶりに前年を下回った。以下、「卸売業」27.4年(前年28.5年)、「運輸業」26.2年(同24.5年)、「小売業」25.1年(同23.3年)、「建設業」22.5年(同23.3年)の順。

 “老舗”企業の構成比は、最高が「製造業」の56.9%(前年56.8%)で、唯一、50.0%を超えた。次いで、「卸売業」40.7%(同42.0%)、「運輸業」35.7%(同33.3%)、「小売業」33.3%(同30.6%)、「建設業」31.5%(同31.9%)と続く。製造業でコロナ禍により倒産した企業は、業績低迷や資金繰りに余裕がない小・零細企業が多い。さらに、経営者の高齢化や後継者問題などの課題を抱え、行き詰まるケースもある。

 一方、業歴10年未満の“新興”企業の構成比は、最高が「情報通信業」の43.2%(前年33.7%)。次いで、「サービス業他」39.6%(同39.1%)、「農・林・漁・鉱業」37.5%(同25.6%)と続く。“老舗”企業で構成比がトップの「製造業」は9.3%(同10.5%)と、唯一、10%を下回った。業歴10年未満で構成比トップの「情報通信業」は、小資本でも創業が容易なソフトウェア開発などが多い。平均寿命が最も短いのは、「情報通信業」の14.9年だった。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210203_01.html