東京商工リサーチが発表した「旅行業の倒産動向調査」結果によると、2020年1年間の旅行業の倒産は26件(前年比4.0%増)で、2017年以来、3年ぶりに前年を上回ったが、過去20年間では最少の2019年(25件)を1件上回るにとどまった。一方で、負債総額は299億7200万円(同2009.2%増)で、件数同様、3年ぶりに前年を上回り、2017年(215億7300万円)以来、3年ぶりに200億円を超え、過去20年間で最大となった。
2020年の新型コロナ感染拡大は、海外との入出国規制、緊急事態宣言発令による外出自粛などで、国内外の人の移動を大幅に制限し、観光業界に大打撃を与えた。倒産件数は過去20年間で2番目の低水準に抑えられたが、東京商工リサーチがまとめた「2020年1~10月の休廃業・解散動向調査」では、同期間に休廃業・解散に至った旅行業者は前年同期の1.4倍に増加している。倒産回避策だけでなく転業や廃業への支援も必要になっている。
原因別をみると、「販売不振」が21件(前年比4.5%減)で最も多く、倒産全体の8割(構成比80.7%)を占めた。そのほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が2件、「過小資本(運転資金の欠乏)」と「他社倒産の余波」、代表者の死亡など偶発的原因による「その他」が各1件。『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が23件で、約9割(同88.4%)を占めた。
負債額別では、最多は「1千万円以上5千万円未満」が14件(構成比53.8%)で、過半数を占めた。次いで、「5千万円以上1億円未満」が6件(同23.0%)、「1億円以上5億円未満」が4件(同15.3%)で続く。1億円未満が20件で、構成比は前年(84.0%)より7.1ポイント低下したが、約8割(76.9%)を占めて小規模倒産が中心となる様子をみせる。このほか、前年に発生しなかった5億円以上が2件あった。
形態別では、消滅型の「破産」が25件(構成比96.1%)で最も多く、倒産全体の9割以上を占めた。前年は全て破産だったため、構成比は3.9ポイント低下した。前年発生しなかった民事再生法は1件。2015年(1件)以来、5年ぶりに発生した。小規模事業者が事業継続を断念し、破産を申請するケースが多い。一方で、債務を整理して民事再生法により再出発を図るケースは多くない。
同調査結果は↓