緊急事態宣言発出に伴う一都三県の経済へのダメージ

首都圏で新型コロナウィルスの感染拡大が続くなか、一都三県の知事らが緊急事態宣言の発令要請に踏み切った。これを受けて、政府・与党は緊急事態宣言の再発令の是非を早期に検討する。第一生命経済研究所がこのほど発表した「緊急事態宣言発出に伴う経済へのダメージ」と題したレポートによると、一都三県の緊急事態宣言1ヵ月発出で、半年後の失業者数が+14.7万人増の可能性があると予測している。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言は、外出制限や交通規制に対して強制力にはならないものの、経済活動自粛の動きが強まることは確実とみている。そこで、2020年7~9月期の家計調査(全世帯)を基に、外出自粛強化で大きく支出が減る不要不急の費目を抽出すると、外食、設備修繕・維持、家具・家事用品、被服及び履物、交通、教養娯楽、その他の消費支出となり、支出全体の約51.7%を占める。

 この結果と一都三県の家計消費が全国の約1/3を占めることからすれば、緊急事態宣言の発出により一都三県の不要不急消費が1ヵ月止まると仮定すると、2020年7~9月期の家計消費を基準とすれば最大▲3.3 兆円の家計消費が減る。さらに、産業連関表の付加価値誘発係数に基づくと、GDPベースでは2020年7~9月期のGDPを基準として最大▲2.8兆円(年間GDP比▲0.5%)の損失が生じる計算になる。

 また、近年のGDPと失業者数との関係に基づけば、この損失により+14.7 万人の失業者が発生する計算になる。内閣府の「景気ウォッチャー調査」を用いて、緊急事態宣言が発令された2020年4月の現状判断指数を業種別にみると、最も悪化したのが百貨店であり、営業を止めていたことの影響が大きかった。次が飲食関連で、夜の時間に営業できなかったことが大きかったと推察される。

 続いて低水準だったのは、旅行・交通関連、次が衣料品専門店となっている。背景には、外出しなくなったことで、服を買わなくなったということがある。このように、人が動くことによって需要が発生する産業にとっては、やはり相当大きなダメージがあると想定される。従って、緊急事態宣言発出となった場合は、政府は予備費を活用してそれ相応の保証が必要となってくると指摘している。

 同レポートの全文は↓

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2020/naga20210104kinkyuu.pdf