新設法人、2020年は2年ぶりに前年を下回る可能性

 東京商工リサーチが発表した「全国新設法人動向調査(速報値)」結果によると、新型コロナウイルス感染拡大で景気の先行きが不透明ななか、2020年1~8月に全国で新しく設立された法人(新設法人)は8万4718社、前年同期比3.0%減と、前年を下回ったことが分かった。2019年(1~12月)の新設法人数は13万1292社(前年比1.7%増)と増加をみせていたが、2020年は2年ぶりに前年を下回る可能性が出てきた。

 2020年1~8月の新設法人数を業種別でみると、「宿泊業」が前年同期比33.9%減(780社→515社)、「飲食業」が同16.0%減(4963社→4164社)と大幅に減少。2020年は年初からコロナ禍で移動制限や外出自粛、営業時間短縮、新しい生活様式への対応など、企業を取り巻く環境は大きく変化した。こうした状況が起業意識にも影響を与えたとみられ、コロナ禍の収束が長引くと企業の新陳代謝や国内市場の活性化にも影響を及ぼしかねない。

2020年の新設法人数を月別でみると、1月~3月は前年同月を上回ったが、緊急事態宣言が発令された4月以降、前年を下回り、5月は7505件(前年同月比30.8%減)と大きく落ち込んだ。6月も9973件(同9.3%減)にとどまった。4月7日~5月25日の緊急事態宣言による法務局の業務縮小や法人設立に向けた準備の滞りなどの影響を受けたものとみられている。

以上のように、本年1~8月の全国の新設法人は前年同期を下回った。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で法務局が業務を一部縮小したことや移動制限などの事業環境の変化の中で、8月までの累計の減少幅は全体では僅かにとどまった。ただ、宿泊業や織物・衣服・身の回り品小売業など、コロナ禍の影響を大きく受けた業種では新設法人数の減少率が3割を超え、コロナ禍が起業マインドに大きな影響を及ぼしているとみられる。

 月別では、緊急事態宣言による新設法人数「激減」の反動から7月は前年同月比でプラスに転じたが、8月は再度減少に転じた。コロナ禍の収束が不透明で、9月以降も事業環境に大きな変化がないため、引き続き新設法人数は前年同月より弱含みで推移しているとみられる。このため、コロナ禍に見舞われた2020年(1~12月)の新設法人数は、2年ぶりに前年を下回る可能性が出てきた。

 同調査結果は↓

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20201214_03.html