帝国データバンクが発表した「全国企業の後継者不在率動向調査」結果によると、約26万6000社の後継者不在状況は、全体の約65.1%で後継者不在だった。社長年代別では、前年の2019年と比べて「30代未満」、「80代以上」以外で後継者不在率が低下。特に、「40代」以降の後継者不在率は調査開始以来で最低となり、「50代」では初めて7割を下回ったほか、「60代」では2年連続で不在率が5割を下回るなど低下傾向がより強まった。
地域別の後継者不在状況をみると、9地域中4地域で前年を下回った。「北海道」(72.4%)は調査開始以来一貫して全地域中最も高いものの、3年連続で前年を下回った。「関東」(65.2%)、「近畿」(66.3%)では過去最低。一方、「四国」(55.5%)、「九州」(62.7%)は5年連続、「中国」(70.8%)は2年連続で上昇。「中部」(64.4%)は3年ぶり、「北陸」(57.7%)は2年ぶりに増加。特に、中国以西の西日本地域で後継者不在率が上昇した。
業種別で最も不在率が高いのは「建設業」で70.5%。その他を除く全7業種で唯一7割台となっているが、最も高い2018年からは2年連続で低下するなど、不在率には低下傾向がみられる。最も低いのは「製造業」で、57.9%と全7業種中唯一の5割台となっている。ただ、「木材製品」(59.0%)や「家具」(61.4%)など製造15業種中8業種で前年を上回っており、分野によって後継者不在動向にバラつきがみられる。
先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2020年の事業承継は「同族承継」により引き継いだ割合が34.2%に達し、全項目中最も高かったが、2018年からは約10ポイント下落、「同族承継」による事業承継割合は急減傾向にある。一方、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」は34.1%となり、同族承継の僅か0.1ポイント差に迫った。社外の第三者が就任した「外部招聘」は8.3%で、同じく割合に高まりがみられる。
後継者属性をみると、「子供」が最も高い40.4%で、前年から0.3ポイント増加。2番目に高い「非同族」(33.2%)は変化がない。承継を受けた社長の先代経営者との関係別(就任経緯別)に後継者属性をみると、「子供」を後継者候補とする企業が多いのは「創業者」(59.0%)と「同族承継」(49.9%)。ただ、創業者では子供を後継者とする割合は減少傾向にあるが、同族承継では逆に増加傾向で推移するなど、両者の間には動向に差がみられる。
他方、社内外の第三者である「非同族」を後継候補に位置づけているのは「内部昇格」と「外部招聘」、買収などを含む「その他」に多い。「創業者」、「同族承継」などファミリー企業でも「非同族」への脱ファミリー化を考える割合が増加。年代別にみると、60代以降の社長では後継候補として「子供」を選定するケースが多い一方、50代以下の社長では「親族」や「非同族」を後継候補としている企業が多く、従来の傾向に変化はみられなかった。
同調査結果は↓
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p201107.pdf