実質成長率は20年度▲5.5%、21年度3.3%との予測

 信金中央金庫が発表した経済見通しによると、新型コロナの感染拡大に伴う制限が緩和され、7~9月の個人消費は前期比4.7%増と持ち直した。ただ、企業の設備投資は3.4%減と2四半期連続で減少した。一方、世界的な自動車販売の回復等で輸出は前期比7.0%増と回復。内需の弱さを反映して輸入が大幅に減少したため、輸出から輸入を差し引いた純輸出の寄与度は前期比ベースでプラス2.9%、年率換算の成長率を12.2%押し上げた。

 7~9月は年率20%を超える高成長を記録したが、コロナショックで落ち込んだ前期の反動といった側面が強い。月次ベースの個人消費の動きをみると、感染が再拡大した夏場以降、足踏み状態が続いている。「GoToキャンペーン」の効果は低迷するサービス消費の下支えとなっているが、ここにきて第3波とみられる感染が拡大し始めており、サービス関連を中心に個人消費への下押し圧力が再び高まる可能性がある。

 景気は最悪期を脱したものの、賃金の減少傾向は今後も続くと予想される。個人消費は今年4~6月の最悪の状況からは持ち直しているものの、当面も停滞感の強い状態が続く見通し。この先の内外経済は緩やかながらも回復基調を維持すると想定しているものの、ワクチンや治療薬の実用化までにはなお時間を要することから、年度下期も景気下振れリスクの高い状態が続くと予想される。

 20年度の実質成長率はマイナス5.5%と前回予測(マイナス5.9%)から上方修正した。7~9月が想定を上回るプラス成長となったためだが、世界中で新型コロナウイルスの感染が再拡大していることから今後の回復ペースは緩慢にとどまると予想。21年度にはコロナ危機が徐々に収束に向かうと想定しているものの、雇用環境の改善の遅れなどから経済正常化には時間を要するとみられる。

 21年度の実質成長率は3.3%とプラスに転じようが、20年度の落込みは取り戻せないと予測。なお、東京五輪については21年夏の開催を前提としている。21年度には個人消費が緩やかに持ち直すと想定しているが、実際の需要と潜在的な供給力の差である需給ギャップが残ることから、物価上昇圧力は弱い状態が続くとみられる。コア消費者物価の前年比は0.2%の上昇にとどまると予測している。

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