東京商工リサーチの調査によると、2020年10月29日までに上場企業の早期・希望退職者募集が72社に達した。2019年通年(35件)の2倍増と急増し、年間で募集企業が70社を超えたのは2010年(85社)以来、10年ぶり。募集人数も、判明分だけで1万4095人を数え、2019年通年(1万1351人)をすでに上回った。新型コロナ感染拡大が直撃した繊維・アパレル関連に加え、外食が短期間で急増し、業種による偏りが広がっている。
募集が判明した72社のうち、新型コロナの影響を要因(間接的含む)に挙げたのは29社で、全体の4割まで増加した。業種別では「アパレル・繊維製品」と「外食」が各6社で最多。次いで、「電気機器」と「サービス」が各5社、「輸送用機器」3社、「小売」2社の順だった。アパレルや外食など、新型コロナによる外出自粛・消費低迷の影響で、深刻な業績不振に見舞われた企業が多い。
募集人数は、最多が「日立金属」の1030人。次いで、「レオパレス21」の1000人、「コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス」900人、「ファミリーマート」800人(応募1025人)、複数の子会社で募集を行う「シチズン時計」(750人)の順。2019年通年で1000人以上の大型募集は4社だったが、2020年は10月30日までに2社にとどまる。一方、募集人数が300人以下は48社(構成比66.6%)で約7割を占めた。
業績別では、早期・希望退職者を募集した72社のうち、38社(構成比52.7%)が本決算で赤字を計上。また、本決算は黒字だったが、新型コロナ感染拡大後の急激な業績悪化で直近四半期に赤字転落した企業は16社(同22.2%)。合計54社(同75.0%)が、赤字決算から人員削減に踏み切った様子が見て取れる。2020年春から、赤字企業による不採算事業の縮小・撤退や店舗の閉鎖などを理由にしたケースが少なくない。
雇用を取り巻く環境は厳しさを増し、業界によっては“切羽詰まった”状況にある。新型コロナによる企業業績への影響は、国内外の市場が縮小し、依然として先行きは見通せない。さらに、雇用調整助成金の特例措置が年明け後に継続しても、不透明な終了時期への不安を払しょくするのは難しいだろう。こうした状況を背景に、上場企業の早期・希望退職者募集は2021年も高い水準で推移するものとみられている。
同調査結果は↓