各金融機関とも応急的な資金繰り支援の増加額は鈍化

 信金中央金庫が、2020年8月31日に日本銀行が公表した「預金・現金・貸出金」調査にも基づき、銀行各業態の企業向け貸出動向を確認したところによると、7月末の運転資金の前年同月比伸び率は、都市銀行13.7%増、地方銀行8.9%増、第二地銀14.2%増だった。信用金庫は同19.7%増と相対的に高い伸び率となった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う資金繰り支援から各業態とも4月以降、高い伸び率を続けている。

 一方で、この間の企業向け運転資金の月中増減額の推移を日本銀行の「預金・現金・貸出金」等でみると、都市銀行は4月、地方銀行は5月が大きかった。信用金庫、第二地銀は6月が最も大きく、7月は依然として大きく増加しているものの6月に比べると鈍化している。各業態とも4、5月の緊急事態宣言下の売上急減等に伴う応急的な資金繰り支援についてはピークを越えたとみられる。

 中小企業向けの資金繰り支援の増加には、5月から信用保証制度の利用等を条件に民間金融機関でも活用できるようになった実質無利子・無担保の制度融資が大きく寄与している。全国信用保証協会連合会が8月27日に公表した「信用保証実績の推移」によると、保証承諾の件数・金額とも6月が31.9万件、5.8兆円とピークで、7月は26.4万件、4.9兆円と高水準ながらも6月より減少している。

 貸出のボリュームが急増する一方、約定金利の水準をみると、各業態とも低下傾向が続いている。日本銀行が8月31 日に公表した7月の貸出約定平均金利(ストック・総合)は、信用金庫で1.449%と最低水準を更新。この要因としては、フローベースでの金利水準の低さがある。実質無利子・無担保の制度融資の金利を反映する最近のフローベースでの貸出約定平均金利(新規・長期)をみると、信用金庫は5月以降に金利水準が落ち込んでいる。

 資金繰り支援のための制度融資が貸出金利に与える影響は、日本銀行政策委員会審議委員の最近の発言でも言及され、「無利子・無担保の貸出は、今後実行される一般の貸出に対してスプレッドの下押し圧力となる可能性がある」というもの。応急的な資金繰り融資の一巡後は、既往債務の条件変更や新規融資、プロパー融資や保証協会保証付融資を適切に組み合わせるなど、中小企業のニーズにかなった支援がより重要となるとみている。

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