新型コロナウイルスの影響により、「標準報酬月額の特例改定」、いわゆる「コロナ特例の月額変更」ができることになった。通常の月額変更は、固定給の変動があってから3ヵ月間の給与の平均額が、従前の等級から2等級以上の差が生じたときだが、今回の特例改定は、4月から7月までの間の1ヵ月の報酬が、新型コロナ感染症の影響による休業で、従前の報酬月額と比べて2等級以上下がった場合に、その翌月に改定できるというもの。
例えば、休業が発生して、減額された休業手当の支給があったため、5月の支給給与の総額が、従前の報酬月額よりも2等級以上下がった場合は6月の月額変更に該当する。この「減額された」というところがポイント。休業手当は平均賃金の60%以上を支給しなければならないのだが、休業手当が100%支給された場合は、残業代が減って2等級以上下がったとしても今回の特例改定の対象とはならない。
該当した場合、保険料は翌月控除しているから、7月の給与からの控除額が減額される。一番早い4月の給与減額での5月の月額変更を届け出た場合は、6月給与から保険料が減額になるので、定時決定による10月給与からの変更に比べると、4ヵ月早く保険料が下がることになる。注意が必要なのは、特例改定後に「休業が回復した場合」は、通常の月額変更の届け出を行うことになっていること。
5月、6月の月額変更は算定基礎届による定時決定を届け出ることで、特例改定の効果は終了するが、7月、8月の月額変更を提出した場合は、定時決定が行われないので、特例改定を提出した後、「休業が回復した場合」に月額変更の届け出が必要となる。「休業が回復した場合」とは、特例改定を届け出た以降の継続する3ヵ月間の報酬の平均額が、特例改定で決定した標準報酬月額に比べて最初に2等級以上上昇した場合、ということになる。
例えば、6月給与の減額で7月の月額変更を届け出た場合、そのとき標準報酬月額が5等級下がったとする。7月給与以降は、休業日数が少しずつ減ってきて、7月~9月の3ヵ月間は該当しなかったが、8月~10月の3ヵ月間では2等級の上昇が確認できたとすると、11月の月額変更に該当するということになる。当初の等級よりは3等級下がっているが、特例改定の効果は終了となる。
一方で、デメリットもある。給付金は、傷病手当金、出産手当金は標準報酬月額に基づいて算出されるので、保険料が減額されるということは、給付額も減額されてしまう。給付金の受給予定がある人は今回の特例改定は注意が必要だ。そして、将来もらえる年金額にも少しだが影響が出てくる。そこで、今回の特例は対象者の同意が必要となる。同意書そのものは提出の必要はないが、全員の同意をもらったという会社の申立書の提出が必要となる。
日本年金機構 標準報酬月額の特例改定については↓