第一生命経済研究所がこのほど発表したレポートによると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、6月17日に日本政府観光局 (JNTO)から発表された2020年5月の訪日外客数は1700人となり、前年比▲99.9%の超大幅減少となった。先月の2700人をさらに下回る結果となり、統計開始以来の最少人数を更新する結果となった。季節調整値では、前月比▲35.3%(5月:同▲98.6%)となっている。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う水際対策強化や世界的な移動制限措置によって、先月に三ケタ台の訪日客数を維持した韓国、中国、台湾、インドネシア、ベトナム、米国からの訪日客数も一段と減少し、ほぼ全ての訪日客が消失する形となった。今月の訪日客も長期滞在等の在留資格を有する外国人の再入国であるとみられ、観光はもちろんのこと、ビジネスにおいても海外から日本に入国することがほとんどできない状況となっている。
出国日本人数についても2ヵ月連続で1万人を割り込む水準にまで落ち込んでおり、世界的な人の往来が抑制されている状況が示されている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、訪日外客数は大きく減少し、底這い圏での推移が続いている。こうした動きは、検疫強化や査証の無効化といった感染拡大の防止を目的とした動きによるものであるため、当面の間回復は見込めず、底這い圏での推移が続くものとみられる。
ただし、世界的な経済活動再開の動きの中で、持ち直しの兆しもみられている。各種報道によると、日本政府は、タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドのビジネス関連の訪日客に対して、1日当たり250人程度の入国制限の緩和を検討しているという。該当する人数は9万1250人と、2019年の訪日外客数の0.3%にも満たない水準ではあるものの、その有用性は高いとみられている。
それは、今回の入国制限緩和に伴うPCR検査の実施や行動計画書の利用など、アフターコロナの訪日客の受入れを行う上で求められるノウハウの蓄積などだ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年の観光白書から4000万人という記述が消えるなど、インバウンドを取り巻く環境は非常に厳しい環境になっているが、今後の段階的な入国制限の緩和を見据えて、新たな環境下での受け入れ態勢を整備していくことが求められる。