被用者保険の適用拡大など年金制度改正法が成立

 厚生労働省はこのほど、5月29日の第201回通常国会において、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金制度改正法)が成立したことを明らかにした。改正法の主な内容は、(1)被用者保険の適用拡大、(2)在職中の年金受給の在り方の見直し、(3)受給開始時期の選択肢の拡大、(4)確定拠出年金の加入可能要件の見直し等となっている。施行期日は原則2022年4月1日。

 被用者保険の適用拡大では、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引下げ(現行500人超→100人超→50人超)。5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加。厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付を適用、などがある。

 在職中の年金受給の在り方の見直しでは、高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者65歳以上の年金額を毎年定時に改定することとする。60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大する(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円(2020年度額)に引き上げる。

 受給開始時期の選択肢の拡大は、現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大する。また、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等では、確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げるとともに、受給開始時期等の選択肢を拡大。確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大(100人以下→300人以下)、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度面・手続面の改善を図る。

 そのほか、国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替えや、未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加、短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(具体の年数は政令で規定)、年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し、児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直しなどがある

 年金制度改正法の概要は↓

https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf