大阪シティ信用金庫が大阪府内の取引先企業を対象に4月上旬に実施した「中小企業における事業承継の現状調査」結果(有効回答数1265社)によると、後継者の決定状況は、「すでに決まっている」との企業が34.0%に対し、「決まっていない(未決定)」が50.1%だった。未決定企業のうち37.9%は「まだ決める時期ではない」という時期尚早企業。「自分の代限りにするので後継者は不要」とする廃業予定企業は15.9%だった。
このまま事業承継対策を講じなければ、「決まらない」(12.2%)と「自分の代限り」(15.9%)を合計した28.1%の企業が将来的に減少(廃業)することになる。業種別でみると、未決定企業の割合は、「運輸業」(42.5%)や「製造業」(41.5%)で4割を超え、相対的高い。従業者規模別でみると、決定企業割合は、「5人未満」(22.4%)で他の規模層より低い一方、「自分の代限り」とする割合(33.7%)が3割を超え、特に高い。
決定企業の具体的な後継者は、「子供」が77.4%で圧倒的に多く、これに「子供以外の親族」の11.6%を加えた89.0%が親族内承継。一方、「親族以外の役員・従業員」は10.5%。中小企業では世襲による経営者の交代が主流だ。これを2018年の前回調査と比べると、「子供」が3.1ポイント増加、「子供以外の親族」も0.4ポイント増加に対し、「親族以外の役員・従業員」が3.4ポイント減少し、親族以外への事業承継は前回調査からやや後退した。
後継者を「決める必要があるが決まらない」とした未定企業のその理由は、「候補者が見当たらない」が28.4%で最も多いが、「候補者から了解を得られない」が24.5%、「事業承継を考える時間や余裕がない」が23.9%、「候補者はいるが、決めかねている」が21.9%と大差なく続いている。このように後継者が決まらない理由は様々だが、円滑に事業承継を進めるためにも、早めに準備を始めることが大切だ。
最終的に後継者がどうしても決まらなかった場合の対応は、「可能なら事業譲渡(売却)したい」とする経営者が76.8%で圧倒的に多く、「廃業する」は23.2%だった。これを2018 年の前回調査と比べると、「可能なら事業譲渡(売却)したい」とする割合が17.5 ポイント大幅に増加。全国都道府県への事業引継ぎ支援センターの設置や補助金制度の拡充など、中小企業のM&Aを支援する環境が整ってきたことが影響しているものとみられる。
なお、事業承継の意向がある経営者の事業承継に係る主な相談先(3つまで回答)は、「税理士・公認会計士等」が68.0%で最も多い。事業承継問題を解決するためには、税務や法務などの専門家の力を借りることが必要になるためとみられる。これに、「取引金融機関」が40.0%で続いており、金融機関に対する潜在的な相談ニーズも高い。また、「他社の経営者や友人」(32.2%)や「親族」(31.2%)が約3割となっている。
同調査結果は↓
https://www.osaka-city-shinkin.co.jp/houjin/pdf/2020/2020-05-12.pdf