eシールの衝撃~ウィズコロナ時代のハンコ革命

 表題は第一生命経済研究所のレポートである。新型コロナ感染拡大の防止策としてテレワークが求められるなか、日本CFO 協会が実施した「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」によれば、テレワークを実施又は推奨した企業のうち、41%が「テレワーク実施中に出社する必要が発生」と回答。出社理由では「紙の書類の処理(請求書・証憑書類・押印手続・印刷)」など、ハンコ押印が出社の理由の1つとなっている。 

 組織の正当性を証明するのが社印だが、これに相当するデジタル上のハンコを「eシール」という。請求書や領収書にeシールを付与することで、社印の押印と同様の効力が発生する。eシールを使えば、押印作業は必要なくなり、郵送は電子メールに置き換えられ、受け取る企業においても郵便受付はメール受信に代替される。eシールは、2016年7月にEU 域内において発行されたeIDAS 規則において規定された。 

 eIDAS 規則にはeシールのほかに、電子署名、タイムスタンプ、ウェブサイト認証、eデリバリーと呼ばれるトラストサービスが公的に認定されている。これらのトラストサービスは、EU 域内の国民や企業活動を円滑化することを目的として創られ、それぞれ役割を担っている。一連のトラストサービスについては、国別にプロバイダー一覧が閲覧可能となっており、利用者はどのプロバイダーがeシールを提供しているか確認できる。 

 eIDAS 規則に規定されている電子署名やタイムスタンプは、既に日本において法制化されており、組織の代表印の代替として利用可能な一方、組織の正当性を証明するeシールは未だ法制化されておらず、請求書や領収書への社印の代替手段は見当たらない。総務省トラストサービス検討WG 最終取りまとめによれば、eシール導入によって、大企業1社あたり現状月10.2万時間の業務量は月5.1万時間に半減する試算が示されている。 

 日本の歴史を振り返れば、黒船来航や先の敗戦など社会システムを大きく変えなければならない困難に直面した際に、法律や慣習といった決まり事が大きく変化してきた経緯がある。コロナウイルス感染拡大の先行きは不透明であるものの、この困難を変革のきっかけにすることが求められる。レポートは、「eシールの活用を、ウィズコロナ時代に必要な新しい働き方への第一歩とすべきではないだろうか」と結んでいる。 

 同レポートの全文は↓ 

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2020/wt2005.pdf