棚卸資産の評価損、売れ残った季節商品の取扱いは?

 婦人服など季節や流行によって売上が左右される商品は、販売時期を逃すと商品価値が著しく低下してしまうことがある。企業としては季節商品などで売れ残った商品については、その税務処理が気になるところだろう。法人税法では、法人がその有する資産の評価替えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、原則として、損金の額に算入されないとされている。

 ただし、一定の事実が生じたことによって時価(処分可能価額)が帳簿価額(仕入価額)を下回ることとなった場合等には特例が認められている。法人が有する商品・製品などの棚卸資産については、(1)災害による著しい損傷、(2)著しい陳腐化、(3)これに準ずる特別の事実、によりその価額(時価)が帳簿価額を下回ることになった場合には、損金経理により期末時価までの評価損を計上することが認められている。

 棚卸資産の著しい陳腐化については、通達において、「棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する」とされ、「売れ残った季節商品で、今後通常の価額では、明らかに販売できなくなったこと」と例示されている。

 さらに、「その商品と用途の面では概ね同様のものだが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、その商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと」も著しい陳腐化の事実に該当するとしている。上記の「価値が著しく減少」の減少の程度については、具体的な数字を定めた通達等はないが、棚卸資産の期末の時価が、帳簿価額の概ね50%以下になった場合とみられている。

 また、「これに準ずる特別な事実」としては、(1)破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等により通常の方法によっては販売できなくなったこと、(2)民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより、棚卸資産につき評価換えをする必要が生じたこと、が例示されている。ただし、棚卸資産の時価が、単なる物価変動や過剰生産、建値の変更などの事情によって低下しただけでは、評価損の計上はできないので注意したい。