上場企業各社は「決算短信」や「業績予想の修正」、「お知らせ」などで、新型コロナウイルスに関する業績への影響や対応策などを情報開示している。東京商工リサーチが発表した「上場企業の新型コロナウイルス影響調査」結果によると、3月13日正午までに新型コロナウイルス関連で情報開示した上場企業は525社に達した。また、同社の独自調査で工場や事業所、店舗の稼働休止など何らかの影響が判明した上場企業は24社あった。
情報開示した525社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスの影響に言及したのは335社にのぼった。このうち、115社(構成比34.3%)が、売上高や利益の減少など、業績などへのマイナス要因、業績予想の修正要因として新型コロナウイルスの影響を挙げた。このほか220社(同65.7%)が「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響を確定することは困難として織り込んでいない」とした。
業績予想の修正分のマイナスは合算すると、売上高が5172億円、最終利益が1232億円にのぼった。売上高の修正額の最大は「(株)エイチ・アイ・エス」で、以下、「住友化学(株)」、「三菱ロジスネクスト(株)」などが続く。また、クルーズ予約サイト運営の「(株)ベストワンドットコム」は「クルーズ船の運航中止などの事案が複数発生しており、業績予想の算定ができず一旦未定とする」とし、従来の業績予想の取下げを発表した。
従業員などに感染者が出たことを公表した企業は35社。この他、感染防止のために在宅勤務などのテレワークや時差出勤の実施など、従業員の働き方の変更を公表した企業が37社あった。549社の業種別では、「製造業」が最も多く237社(構成比43.1%)。サプライチェーンの乱れや人手確保の問題などから正常稼働には至っていないケースも多い。次いで、「サービス業」79社、「小売業」74社と続き、上位3業種で約7割を占めた。
政府は10日、新型コロナウイルス感染症対策本部で第二弾となる緊急対応策を決めた。この中で、安倍首相は感染拡大防止策として、大規模イベントの自粛を10日程度継続するよう要請。終息が見えないなか、新型コロナの感染拡大で、インバウンド需要の消失に加え、消費低迷やイベント自粛などが企業業績に悪影響を及ぼしている。今後も、会合や宴会、旅行のキャンセル等、個人消費の低迷、製造業のサプライチェーンの乱れなどが懸念される。
同調査結果は↓