2019年の粉飾企業倒産は約27%増と大幅増加の85件

 帝国データバンクによると、2019年の企業倒産件数は8354件発生、2年ぶりの前年比増加となった。小規模倒産が大半を占める中で、中堅以上の企業で“粉飾”が相次いで発覚。なすすべもなく倒産に至る事例が目立っている。同社がこのほど発表した「粉飾企業の倒産動向調査」結果によると、2019年(1月~12月)の粉飾企業の倒産は、85件判明した。前年の2018年(67件)を26.9%上回り、大幅増加となった。

 業種別にみると、最も多かったのは「卸売業」の30件(構成比35.3%)で、都内を中心に複数の卸売業者で架空取引による売上水増しが横行したことなどが増加の要因となった。以下、「製造業」(15件)、「建設業」(14件)が続いた。また、負債規模別にみると、「1億~5億円未満」と「10億円以上」がともに33件(構成比38.8%)で並んだ。特に「10億円以上」は、2018年(23件)を43.5%上回り、大幅に増加した。

 主な倒産事例をみると、婦人服アパレルブランド「J.FERRY」を展開していた (株)リファクトリィ(東京都中央区、2019年5月民事再生)は、2018年6月期には年売上高約44億円を計上していたが、2019年5月に10年以上にわたる粉飾決算が判明。実際には2016年以降、売上の不振が続き、2018年6月期の年売上高は約25億6000万円にまで減少していたなか、多額の簿外債務も重荷となり、自主再建を断念した 。

 また、やきとり店「ひびき庵」を経営していた(株)ひびき(埼玉県川越市、2019年8月民事再生)は、人気のみそだれを使った焼き鳥で、出店ペースの加速とともに業容も拡大基調をたどり、2018年6月期は年売上高約20億7400万円を計上。しかし、各種の投資に要した費用が大きく膨らみ収益を圧迫。10年ほど前から架空売上の計上など粉飾が行われていたほか、不正リースも発覚し、法的手続きによる再建を目指すこととなった。

 粉飾企業の倒産では、長年の不義理から債権者の協力を得られず、やむなく事業継続を断念するケース や、その後、融資詐欺等で刑事事件化する場合もあり、社会に与える影響は大きい。また、粉飾企業が相次ぐ背景には、「近年、企業と金融機関の間に本来あるべき緊張感が足りなかった面もあったのでは」(地銀幹部)との指摘もあり、両者の関係を見直させる結果ともなっている。

 「粉飾企業の倒産動向調査」結果は↓

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200110.pdf