東京商工リサーチがこのほど発表した2019年(1~10月)の「粉飾決算倒産調査」結果によると、同期の「コプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」が一因となった倒産は16件で、前年同期(8件)の2.0倍に急増していることが分かった。すでに、前年1年間の9件を上回り、2017年以来、2年ぶりに20件台に達する勢いとなっている。また、倒産には至らないが、粉飾決算が発覚するケースも相次いでいる。
粉飾決算は、企業が金融機関からの融資を受けたり、取引先の信用維持のため決算書を良くみせるために行う。粉飾決算に手を染めるきっかけは様々だが、「海外での投資失敗の隠蔽」や「赤字のため取引先から支払条件が厳しくなった」などの事業上の要因だけでなく、最近は「税金滞納の解消のため」、「代表者の相続税を支払うため」など、事業承継や税金滞納などに起因した時代を反映したケースも目立つ。
本年10月までの粉飾決算倒産を形態別にみると、「破産」が10件(構成比62.5%)で最多のほか、「民事再生法」が4件(同25.0%)、「特別清算」と「銀行取引停止処分」が各1件(同6.2%)。「粉飾倒産」の半数以上を、清算型が占めた。ビジネスの世界でも、コンプライアンス重視の風潮が年々強まっているが、粉飾決算を一因とする民事再生法は信用失墜が大きいだけに自力再建は難しく、スポンサーによる再建を選択する企業が多い。
都道府県別では、「東京都」が5件で最多。次いで、「埼玉県」が3件、「福岡県」と「大阪府」、「千葉県」が各2件、「鳥取県」、「富山県」が各1件だった。負債別では、「10億円以上」が7件で最多、「1億円以上5億円未満」が6件、「5億円以上10億円未満」が3件だった。また、産業別では、最多は「卸売業」の7件で、前年同期の1件から7倍増と急増している。
そのほか、「建設業」、「製造業」、「サービス業他」が各2件、「農・林・漁・鉱業」、「小売業」、「運輸業」が各1件だった。最多の「卸売業」の倒産事例では、海外進出の投資失敗で抱えた赤字を隠蔽するため15年間にもわたり粉飾決算を続けた(株)サンヒット(埼玉県、負債82億円)は、20行を超える取引金融機関ごとに決算書を作成していた。だが、他行用に作成した決算書を別の金融機関に提出したことで粉飾決算が発覚したといわれる。
同調査結果は↓