官民を挙げて「働き方改革」が推進されるなか、育児や介護、病気などで離職・休職しなくて済むよう、柔軟な働き方がしやすい環境整備等に取り組む企業が増えている。情報通信総合研究所が、ICTを活用することによって離職・休職せずに働き続けているホワイトカラー職種の人がどのくらいいるのか及び潜在性はどの程度なのかについて推計を行った結果、現状(2018年)では73万人おり、潜在性は370万人となることが分かった。
今後、日本では少子高齢化が進んで人手不足が深刻化していくことが予想され、2030年に人手は644万人不足するとの調査(パーソル総研・中大「労働市場の未来推計2030」)もある。ICTを活用した働き方改革は人手不足の緩和に貢献するといえる。ICT活用によって離職・休職せずに働くことができる人は潜在的に370万人いると推計されるが、その内訳を、要因別にみると、「病気や怪我」の人が130万人と最も多い。
従来であれば働き続けられないような重い病気・怪我というアクシデントに見舞われた人でもICTを活用することで働き続けられるようになった効果は大きいといえる。次に多いのは「育児中」の人111万人であり、ICTによって育児中でも働き続けられるようになった人も多い。次いで、「介護中」の人77万人、「高齢者」351万人となっており、ICTが少子高齢化による労働力減少に対して有効であることが分かる。
このように、離職・休職せずに働くことができる人が多く生まれた背景には、ICTによって職場外で自由に働けるようになったことがある。職場外で働けることはICTが生み出した様々な価値の一つであり、この価値の大きさを「ICTを活用することによってホワイトカラーが職場外で働く時間」として推計したところ、1人当たり23.2時間/月だった。
一月の平均的な勤務日数を20日と考えると、ICTの生み出す効果によって、1日1時間以上は職場以外の場所で働けるようになった。職場外で働く時間の内訳を場所別にみると、まず「屋内の自宅」が14.2時間/月と合計の半分以上を占めており、自宅でのテレワークの広がりがうかがえる。次に大きいのは「サテライトオフィス」の3.9時間/月であり、サテライトオフィスを活用する企業の増加が背景にあるとみられる。
屋外では、「電車、バス、自動車の中」の2.1時間/月が最も大きい。販売・営業職が営業車の中で行う仕事の時間が大きいと推察される。また、「新幹線、飛行機の中」は0.8時間/月と大きくないが、出張等の時でもICT活用で働いていることがうかがえる。ICTが生み出す「職場外で働ける」という価値は、労働時間の削減や企業の生産性の向上にもつながる。働き方改革に関連してICTが生み出す価値は非常に大きいといえる。
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