帝国データバンクが、取引先企業などから具体的な輸出先国・地域が判明した約1万2千社を対象に分析・集計した「2019年日本企業の輸出先調査」結果によると、輸出地域として最も割合が高かったのは「アジア」(80.3%)で、全輸出企業のうち約8割がアジア地域を対象としていた。以下、「北米」(26.7%)、「欧州」(19.6%)、「中東」(3.4%)、「大洋州」(3.3%)、「中南米」(3.1%)の順。最も低いのは「アフリカ」(1.5%)だった。
国・地域別では、「中国」が最も多く33.8%。以下、「米国」(25.8%)、「韓国」(20.2%)、「台湾」(18.0%)、「タイ」(12.3%)、「香港」(12.1%)、「シンガポール」(8.0%)の順。上位20のうちアジア域内の国・地域は11にのぼった。また、2ヵ国以上の複数国・地域への輸出が判明した企業は、輸出企業の42.5%を占めた。このうち輸出先国・地域の組合わせ上位20通りのうち10通りで「米国」が、8通りで「中国」がそれぞれ占めた。
輸出先国・地域の組合わせで最も多いのは「中国・香港」(3.2%)、次いで「中国・台湾」(3.1%)、「韓国・台湾」(3.0%)と続き、上位はいずれもアジア地域をメインに輸出事業を展開していた。このほか、「中国・米国」へ輸出する企業は2.3 % だったほか、「米国・ドイツ」(1.2%)、「米国・英国」(0.9%)、「米国・フランス」(0.6%)など、米国・欧州各国を軸に輸出事業を展開する企業も多数みられた。
日本が締結した、または締結交渉中である多国間の自由貿易圏内に向けた輸出では、「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」が66.8%を占め最高。同協定は現在交渉中だが、発効されれば3社に2社の輸出面で恩恵が及ぶ。次いで、「日中韓・FTA(自由貿易協定)」圏が47.4%。3位は「日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)」圏(28.8%)となり、現在発効している貿易協定では最も多くの輸出企業をカバーしていた。
今後は、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会の利下げや英国のEU離脱などによる為替の変動などが不安要素となる。アジア向け輸出は、特に対中輸出を行う企業では米中両国間での貿易摩擦や同国経済の減速による影響に留意する必要がある。約2割を占める韓国向け輸出企業についても、安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える、いわゆる「ホワイト国」からの除外など、日韓関係の悪化による影響を一定程度受けるとみられる。
北米向け輸出については、特に米国の通商政策に左右される局面が続く。中南米向けでは、企業の半数超が「日本に必要」と回答したTPP11 の発効に伴い、既にEPAを結ぶペルーやチリ向けの輸出企業増加、事業展開の進展などが予想される。欧州向けでは、2019年に発効した日EU・EPAにより、今後EU加盟国向けの輸出企業増加が期待されるが、英国のEU離脱問題にともなう通商環境の変化には注視が必要とみている。
同調査結果は↓