東京商工リサーチはこのほど、2018年1年間に全国で新たに設立された「合同会社」及び「一般社団法人」の調査結果を発表した。それによると、2018年の新設法人は9年ぶりに前年を下回ったが、「合同会社」は2万8940社(前年比7.4%増)と過去最多を記録。新設法人に占める割合も22.5%と前年比2.13ポイント上昇し、法人格別では唯一増加(「株式会社」は年々低下し2018年は68.1%)。2013年(1万4434社)の2倍に増えた。
「合同会社」の特徴は、設立の手続きが容易で、費用も安く、経営の自由度が高い。これが選択肢の大きな理由になっている。一時、大ブームとなった不動産投資案件ごとに合同会社が設立されたことも大きかった。「合同会社」は小規模のイメージが先行するが、株主総会などを開催する必要がなく、アップルの日本法人の「Apple Japan」、食品スーパーの「西友」など、外資系企業や大手企業が合同会社に変更するケースも増えている。
「合同会社」の構成比を業種別にみると、「不動産」が20.6%でトップだが、前年から0.8ポイント減と減少へ転じた。スルガ銀行の投資用不動産向け不正融資問題などから市況が悪化し、投資家が減少したとみられる。次いで、経営コンサルタントなど「学術研究,専門・技術サービス業」が13.2%、ソフトウェア業など「情報サービス・制作業」が8.7%の順。「建設業」は4.5%で、前年から20.1ポイント減と大幅に減少した。
一方、2018年に全国で新設された「一般社団法人」は5982社(前年比6.3%減)で、2008年に調査を開始以来、初めて前年を割り込んだ。新設法人の法人格では、「株式会社」、「合同会社」に次いで3番目に多かった。相続税対策を意図した「一般社団法人」の設立も少なくなかったが、2018年度の税制改正で相続税などが見直され、メリットが薄まったことも影響したとみられている。
2008年12月、「社団法人」は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の施行で、公益性が必須ではなくなったため、任意団体などが法人化しやすくなり、「一般社団法人」の設立が増加していた。さらに、株主のいない「一般社団法人」の利便性を活用した相続税逃れともとれるスキームが横行。株式などの出資がなく、個人資産を移した「一般社団法人」を設立することで、代表を変更だけで事実上、資産を継承することが可能だった。
だが、2018年度税制改正で、同族の「一般社団法人」にも相続税当が課されることになり、相続税逃れとも取られかねないスキーム活用の「一般社団法人」の新設も、ブームの終焉を迎えたのかどうか、今後の展開が注目される。「一般社団法人」は、各種団体や研究機関など「株式会社」とは違った特殊な活用がみられ、一方で、「金融,保険業」や「不動産業」など資産の管理会社に近い業種は、前年から大幅に減少。法改正が影響したとみられる。
「合同会社」の新設法人調査結果は↓
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190708_01.html
「一般社団法人」の新設法人調査結果は↓