8割を占めた2019年度に「賃上げを実施した」企業

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2019年度賃上げに関するアンケート調査」結果(有効回答数7693社)によると、「賃上げを実施した」企業は80.9%と、全体の8割を占めた。規模別では、大企業は「賃上げを実施した」が81.5%、「実施していない」が18.5%。一方、中小企業は「賃上げを実施した」が80.8%、「実施していない」が19.2%と、賃上げ実施は、大企業が中小企業を0.7ポイント上回った。

 賃上げを実施した企業の賃上げ内容(複数回答)は、最多は「定期昇給」の78.8%、次いで、「ベースアップ」(42.0%)、「賞与(一時金)の増額」(32.9%)と続く。新卒者の初任給の増額は、大企業の25.4%に対し、中小企業は15.6%で、9.8ポイントの差があった。定期昇給の上げ幅(月額)は、最多は「5000円以上1万円未満」で20.5%、次いで、「2000円以上3000円未満」(19.9%)、「3000円以上4000円未満」(17.6%)だった。

 賃上げを実施した理由(複数回答)については、全企業で最多は「雇用中の従業員の引き留めのため」が44.5%。次いで、「給与規定に基づく定期昇給」(36.7%)が続くが、大企業は49.5%、中小企業は34.8%で、大企業が中小企業を14.7ポイント上回った。「雇用中の従業員の引き留めのため」は、大企業が34.5%、中小企業は46.0%と、中小企業が大企業を11.5ポイント上回った。

 大企業では給与基準が明確に規定され、定期昇給を定めている企業が多く、賃上げ実施企業の約半数を占める一方、中小企業は34.8%にとどまる。また、「雇用中の従業員の引き留めのため」は、中小企業と大企業の差は11.5ポイントと大きく、採用難が続く中で、雇用の維持に苦慮する中小企業の姿がみてとれる。「その他」は、10月に予定される消費増税への対応、各都道府県の最低賃金が引上げられたことによる増額などの回答もあった。

 一方、賃上げを実施しない(する予定はない)理由(複数回答)は、「景気の見通しが不透明であるため」が47.0%、「業績低迷」が36.5%だった。大企業は「人件費増加を抑制するため」が35.3%で最多、次いで、「景気の見通しが不透明」(34.7%)、「業績低迷」(32.9%)と続く。一方、中小企業は「景気の見通しが不透明」が48.7%で最も多く、中小企業のほうが、景気変動による経営悪化のリスク要因に人件費を考えているようだ。

 同調査結果は↓

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190702_01.html