課税・徴収の効率化・高度化の実現を目指す国税庁

 国税庁は先日、「税務行政の将来像」(2017年6月公表)に関する最近の取組状況を公表したが、そこでは、ICTの活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を柱に、「スマート税務行政」に進化していくことを示した。今回は、国際的租税回避への対応や富裕層に対する適正課税の確保、大口・悪質事案への対応といった重点課題への的確な取組みのための「課税・徴収の効率化・高度化」をみてみる。

 具体的には、調査等の高度化では、(1)情報収集の拡大として、CRS情報の積極的な活用、情報照会手続きを活用した的確な情報収集など、(2)情報分析の高度化として、機械学習技術による選定の高度化の検討、大量データのマッチング分析など、(3)複雑困難事案への対応として、国際的租税回避への対応、富裕層に対する適正課税の確保、消費税の適正課税の確保、大口・悪質事案への対応、新しい経済取引への対応、などがある。

 CRSは、OECDが策定した非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準だが、国税庁においては、受領したCRS情報を活用し、利子・配当等の申告漏れ、相続財産の申告漏れを把握するほか、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他既に保有している様々な情報と併せて分析し、海外取引・海外資産を的確に把握し、課税上の問題が認められる場合には確実に税務調査等を実施している。

 また、暗号資産(仮想通貨)取引やインターネットを通じた業務請負の普及など、経済取引の多様化・国際化が進展するなか、適正課税を確保するため、2019年度税制改正において、現行実務上行っている事業者等に対する任意の照会(協力要請)について法令の規定が整備されるとともに、高額・悪質な無申告者等を特定するための情報について、国税当局が事業者等に報告を求める仕組みが整備された。

 そのほか、徴収の効率化・高度化では、滞納者の情報(規模・業種等)や過去の架電履歴等を分析して応答予測モデルを構築して、応答予測に基づき作成した効果的なコールリストにより、接触効率の向上を図ることで電話催告事務を効率化・高度化する。滞納者の情報等により、接触効率が高いと予測される日時(曜日・時間帯等)を抽出条件としたコールリストの自動作成を可能とするシステムの構築を図る。