欠損金の繰戻しによる還付制度は、前年度に黒字だった法人が、経営悪化などで今年度赤字に陥った場合、前年度に納税した法人税の還付を受けることができるというもの。ただし、この制度は、(1)解散等の事実が生じた場合の欠損金額及び(2)中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金額を除き、1992年4月から2020年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用が停止されている。
適用対象となる中小企業者等とは、資本金等の額が1億円以下の法人や資本等を有しない法人だが、大法人(資本金の額が5億円以上である法人等)による完全支配関係がある法人や、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を所有されている法人は該当しない。資本金1億円以下の法人かどうかを判定するのは、事業年度終了のときなので、事業年度途中の増資には気をつける必要がある。
制度の適用を受けるためには、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで、連続して青色申告書である確定申告書を提出しており、欠損事業年度の確定申告書の提出期限までに確定申告書とともに還付請求書を提出しなければならない、との要件を満たす必要がある。還付請求書の記入にあたっては、還付請求金額の計算の基となる還付所得事業年度の法人税額からは、延滞税や加算税などの附帯税の額は除外される。
一方、欠損金の繰戻し還付制度を利用すると税務調査が入るといわれている。還付請求書を提出した場合には、税務署長は、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について調査することが税法で規定されている。しかし、必ずしも税務調査が行われるとは限らない。その調査が署内の精査だけで済むかどうかは、当然、その還付請求書の内容によるだろう。申告内容に誤りや疑問がなければ、問題なく還付される。
なお、繰戻し還付における当期の還付金額は、「前期の法人税額×当期の欠損金額(前期の所得金額が上限)/前期の所得金額」で計算した金額となる。例えば、前期に500万円の黒字で75万円の法人税を納付(特例税率15%の場合)した法人が、今期200万円の赤字だったケースでは、前期の黒字と今期の赤字を相殺し、「75万円×200万円/500万円」で計算した30万円が前期に納税した法人税から還付される。