近年、グローバル化が進み日本企業による海外M&Aが増加傾向にあるなか、経済産業省は、昨年夏より、M&A経験豊富な海外企業や外資系投資ファンドへのインタビュー、日本企業とのグループディスカッションを含むワークショップ等を通じ、M&Aの最前線に立つ国内外企業の「生の声」を集め、日本企業による海外M&Aの課題を整理した報告書をまとめ、このほど公表した。
それによると、海外M&Aにおける日本企業の課題は、「グローバル経営力の不足」、「グローバル経営の制度・仕組みの未整備」、「M&Aプロセス全体を意識した『型』作りの不備」の3点。「グローバル経営力の不足」では、自社の経営理念・ビジョン・強み、M&Aの位置付けを明確に「伝える力」、「伝える力」に必要となる「言語力」、買収後の経営を効果的に推進するための「異なる企業文化への適合力」を課題として示した。
また、「グローバル経営の制度・仕組みの未整備」では、説明責任・結果責任を意識したコーポレートガバナンスへの対応、インセンティブの仕組みを含むグローバルスタンダードの報酬制度を課題として挙げた。さらに、「M&Aプロセス全体を意識した『型』作りの不備」では、M&Aの戦略、実行、PMIの各プロセスにおいて押さえるべきポイントの明確、M&Aへの取組みにかかわる組織体制を課題として挙げた。
海外M&Aでは、異なる言語・文化・商慣習・制度を有する海外企業を買収し経営管理していく必要があるため、グローバルで共通とされる経営力を備え、かつ、グローバルで多く取り入れられ、当たり前とされている制度や仕組みに対応することが不可欠であり、国内M&Aとは大きく異なる。また、M&Aを行う際の戦略から検討・実行、買収後の経営管理までの一連のプロセスの型を持っているかという点も問われている。
報告書では、また、調査を通じて吸い上げられた国への要望として、高度専門スキルを持つ外国人経営層に対する日本居住の税制インセンティブの設計や、海外子会社従業員、経営陣に対する日本の親会社株式売却時の税制、ストックオプション行使時の手続きの簡素化、高機能自動翻訳機の開発促進のための税制優遇、ITシステム設備投資の税制優遇等、税制インフラの整備の必要性についても盛り込んでいる。
この件は↓
https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190409003/20190409003.html