回答企業の98.4%が「事業所内保育所」を未設置

 東京商工リサーチが実施した「事業所内保育所に関するアンケート調査」結果(有効回答数9081社)によると、事業所内に保育所を「設置している」企業はわずか1.6%にすぎず、「設置していない」企業が98.4%にのぼった。自社で設置していないが、「民間の保育所・託児所と提携している」企業が0.9%あった。設置が進まない理由は、「保育士の確保」が難しいことと施設の「ランニングコスト」が各50%を超えている。

 社員(パート・アルバイト含む)の男女比率別では、女性社員30%未満の企業で、「設置」が0.9%、「設置していない」が97.5%、「民間の保育所・託児所と提携」が0.6%。一方、女性社員が30%以上の企業では、「設置」が2.7%、「設置していない」が94.3%、「民間の保育所・託児所と提携」が1.3%だった。女性の従業員が多い企業で設置割合が高く、保育ニーズの高さが設置に向けて背中を押していることをうかがわせた。

 事業所内保育所の設置・運営を検討する上で障壁となる要素(複数回答)については、「保育士(スタッフ)の人材確保」が64.5%と最多、次いで、「施設のランニングコスト」(61.3%)も6割を超え、深刻化する保育士不足やコストアップを懸念する声が多かった。また、「開設までの費用負担が重い」(50.6%)が半数を占め、資本金別では、1億円未満の51.4%に対し、1億円以上は46.0%と5ポイントの差がついた。

 事業所内保育所を設置のメリット(複数回答)は、「産休・育休利用者らの復職率の向上」が51.4%で最多、「人材採用に有利」も50.0%と、それぞれ5割を上回った。規模別では、「復職率の向上」が中小企業57.2%、大企業39.1%、「人材採用に有利」が中小企業54.1%、大企業41.3%と、中小企業が大企業に各10ポイント以上の差をつけた。中小企業のほうが大企業に比べ、事業所内保育所の設置効果がより反映されているようだ。

 一方、保育児童の受け皿不足による社員への影響(複数回答)については、最多は「待機児童の発生による社員の不本意な復職の延期」(19.4%)で約2割に達した。次いで、「遠方の保育施設利用による社員の不本意な時短勤務」(15.8%)、「認可保育所への希望が通らず、認可外保育施設への入所」(13.9%)と続く。「子供の預け先が見つからなかったことを理由にした退職」(9.5%)も1割に迫り、受け皿不足の深刻さをみせている。

 同調査結果は↓

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190329_02.html