生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に支払う給与は原則必要経費にはならないが、(1)青色申告者は、一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例、(2)白色申告者は、事業に専ら従事する家族従業員の数、配偶者かその他の親族かの別、所得金額に応じて計算される金額を必要経費とみなす事業専従者控除の特例が認められている。
家族従業員の給与が必要経費として認められる要件は、(1)生計を一にする配偶者や15歳以上の親族のうち、その年を通じて事業に専ら従事している期間が原則6ヵ月を超える人に支払う給与であること、(2)その給与が、仕事に従事している期間、仕事の性質や程度、一般の使用人や同業者の従業員給与、その事業の種類や規模・収益の状況からみて、仕事の対価として相当であると認められること、とされている。
そこで問題となるのは、「生計を一にする」と「専ら」の解釈だ。生計を一にする親族となれば、一般的には事業主の妻や子どもだろうが、子どもが結婚して別居している場合は「生計を一にする」とはいえず、専従者とはならない。しかし、結婚していても、親と同居しており、1階に親が2階に子ども夫婦が住んでいる場合で、食事をともにしているなど「生計を一にしている」事実があるとなれば、事業専従者として認められることになろう。
また、15歳以上の親族であれば高校生や大学生の子どもでも該当するが、現実にはこれらの子どもの事業専従者給与が否認される可能性は高い。青色事業専従者は、通常1年のうち6ヵ月を超える期間その事業に従事した者とされているが、例えば、親の事業を週に2~3回とか、毎日2~3時間手伝っているという状態では、たとえ6ヵ月を超えていても、「専ら」事業に従事しているとはいえず、事業専従者とは認められまい。 税務当局は、こうした事業専従者の範囲について厳しくチェックするので、安易に子どもなどを事業専従者とし、所得を軽減しようとは考えないほうがよい。なお、青色事業専従者給与の必要経費算入の適用を受けるには、3月15日までに、事業専従者の職務内容や給与額等を記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければならないが、届け出た給与額などが無条件で認められるわけではないことに留意したい。