提出範囲が限られている「給与所得の源泉徴収票」

 「給与所得の源泉徴収票」は、給与等を支払った全ての人について作成し交付することとされているが、税務署に提出するものは、範囲が限られている。なお、給与の支払者が税務署に提出する2016年1月1日以後の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、給与の支払を受ける人等のマイナンバーまたは法人番号を記載する必要がある。ただし、受給者に交付する給与所得の源泉徴収票には、マイナンバーや法人番号を記載しないので、要注意だ。

 提出範囲(年末調整をしたもの)は、(1)法人の役員(現に役員でなくても、その年中に役員だった者を含む)については、その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの(役員には、相談役、顧問その他これらに類する者が含まれる)、(2)弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの、(3)上記(1)および(2)以外の者については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの。

 また、年末調整をしなかったものは、(1)「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出者で、その年中に退職した人や、災害で被害を受けたため給与所得に対する所得税等の源泉徴収の猶予を受けた人は、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの(法人の役員は、50万円を超えるもの)、(2)「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出者で、その年中の主たる給与等の金額が2000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの。

 さらに、(3)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった人(給与所得の源泉徴収税額表の月額表または日額表の乙欄または丙欄の適用者)は、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるものが提出範囲となる。「給与所得の源泉徴収票」は、上記の提出範囲に該当するものを、支払者の所轄税務署へ支払いの確定した年の翌年の1月31日までに「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」とともに提出する必要がある。

 注意事項として、給与所得の源泉徴収票は、上記の提出範囲に関わらず、全ての受給者に対し、その年の翌年の1月31日まで(年の中途で退職した場合は、退職の日以後1ヵ月以内)に交付しなければならないことがある。「全ての受給者」には、国内に住所または1年以上居所を有する居住者である外国人従業員も含まれるので、その外国人従業員にも必ず「給与所得の源泉徴収票」を交付しなければならない。

 なお、非居住者に対して、国内において行う人的役務の提供の対価として給与等の支払をした場合には、「給与所得の源泉徴収票」ではなく、「非居住者に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を提出する必要がある。ただし、支払金額が年間50万円以下の場合には、提出する必要はない。支払の確定した年の翌年の1月31日までに、支払調書合計表とともに提出することになる。