観光産業、18ヵ月連続で全産業の景気DIを上回る

 帝国データバンクが発表した「観光産業の最新景況レポート」によると、同社が毎月実施しているTDB景気動向調査で算出した観光DI(0~100の値をとり、50より上であれば景気が「良い」を意味し、50が判断の分かれ目)の推移は、政府が「2023年5月に新型コロナの感染法上の位置付けを5類に移行する」と発表した同年1月以降、上昇基調に転じ、その後、同年3月から 2024年8月まで、18ヵ月連続で全産業の景気DIを上回った。

 実際に5類に移行した2023年5月の観光DIは49.9を記録し、その後は多少の揺れ幅はあったものの、インバウンド需要を背景に48台で推移。2024年1月の能登半島地震による一時的な自粛の動きなどから45.8にダウンしたものの、その後石川県を対象とした観光促進策や、底固いインバウンド需要に支えられ、2024年8月の観光DIは47.2(前月比1.6ポイント増)と2ヵ月連続で改善した。

 足元の動きに対して、企業からは「インバウンド需要は好調」(飲食・北海道)などの前向きな声がある一方、「南海トラフ地震臨時情報で最繁忙期の集客に大きなダメージがあった」(宿泊・和歌山県)、「インバウンドの効果は地方では少なく限定的」(宿泊・福島県)、「夜間の人出が少なく、コロナ禍以前の水準に戻らない」(飲食・新潟県)など地域によって違った声が聞かれた。

 日本政府観光局(JNTO)が発表した「訪日外国人客数」によると、2024年の訪日外国人客は1~7月までの合計が2107万人に達し、前年同期の1303万人を上回った。他方、「主要旅行業者の旅行総取扱額」(観光庁)の内訳をみると、2023年度の「国内旅行」は2兆3559 億円とコロナ禍前の2019年度に迫ったものの、「海外旅行」は1兆699億円と、円安や物価高の影響などで回復が遅く、コロナ禍前の2019年度に大きく及ばなかった。

 2024年度に入ってからも、「旅行総取扱額」の2024年4~6月の累計総額は、前年同期を7.1%上回るにとどまり、通期でもコロナ禍前の 2019 年度を上回るには厳しいペースにある。インバウンド需要を背景に観光DIは全産業の景気DIを18ヵ月連続で上回っているが、多少の円高が進んだことでマイナスの影響が懸念される。人手不足やオーバーツーリズムなどの経営課題に対処しながら、新たな旅行需要を掘り起こす必要がありそうだ。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240908.pdf