コロナ禍が落ち着き、街にはインバウンド需要で外国人観光客が増え、人出が戻ってきた。だが、通い慣れたお店のドアは馴染み客には重いようだ。東京商工リサーチが発表した2024年上半期(1~6月)の「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産状況によると、本年上半期の「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産は、過去10年間で最多の47件(前年同期比161.1%増)に急増した。
コロナ禍で広がった三密を避ける行動や実質賃金の伸び悩み、飲食代の値上げなどで飲み会や接待が減少。お客の利用回数も減少している。コロナ禍で夜の街は一変。大人数で夜遅くまで梯子する機会が減り、インバウンド需要も期待ほど貢献していない店舗が多い。さらに、物価高や価格競争、人手不足、コロナ支援の終了など、複合的な要因が重なり、バーやキャバクラなど夜の飲食業界は苦境に立たされている。
2015年から10年間の上半期の倒産動向をみると、「バー」は、コロナ前の2018年上半期からコロナ禍の2020年同期まで各17件発生。コロナ禍は、コロナ関連の資金繰り支援やジャパニーズウイスキーブームなどもあり、2022年同期は6件、2023年同期は9件に急減した。だが、支援縮小や終了、ウイスキーの値上がり、新しい生活様式の浸透で一転し、2024年同期は24件(前年同期比166.6%増)に急増。過去10年での最多件数を更新した。
「キャバクラ」はこの間、4件前後で推移し、大きな変化はなかった。だが、コロナ禍を経た2024年同期は10件(同150.0%増)と過去最多を更新した。接待などの減少で息切れが表面化したとみられる。一方、価格が比較的安く、カラオケ復調も背中を押した「スナック」は、2024年同期は13件(同160.0%増)に増加したが、最多だった2018年の17件より4件少なかった。
コロナ禍からの復活の裏で、生き残りをかけた厳しい試練が続いている。過去最多を更新した2024年上半期の「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産を分析しところ、原因別では、販売不振が44件(構成比93.6%)と大半を占めた。また、負債額別では1億円未満が43件(同91.4%)、資本金別では1000万円未満が46件(同97.8%)、従業員数別では10人未満が45件(同95.7%)と、小・零細規模の運営会社が中心だった。