原処分の理由の提示に不備と判断、処分を全部取消し

 国税不服審判所は、請求人に対してなされた各更正通知書に添付された各別表から算出される控除対象仕入税額の減少額と各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とが不一致である場合において、各別表に記載のどの部分が課税仕入れと認められなかったのかが判別できないことから、理由の提示に不備があると判断して、原処分庁の消費税等の更正処分等を全部取り消した。

 原処分庁は、各更正通知書に記載された処分の理由には不利益処分の根幹部分をなす事実関係が明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨に反するものではないから、各更正処分の理由の提示に不備はない旨主張した。

 しかし裁決は、その各更正通知書に添付された各別表に記載された金額から算出される控除対象仕入税額の減少額と各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とは一致しておらず(本件不一致)、本件不一致は各別表中の一部の取引について原処分庁が請求人の仕入税額控除の対象と認めた金額(本件差額)があるために生じたものであるところ、請求人において本件差額の存在さえ知ることができないと指摘。

 つまり、本件不一致は、原処分庁が請求人の仕入税額控除の対象と認めた金額(本件差額)があるために生じたものであるのに、その各更正通知書に、本件差額に係る記載がないことにより、各別表を含む各更正通知書の記載だけでは、請求人において本件差額の存在さえ知ることができず、また、各別表に記載のどの部分が課税仕入れとして認められなかったのか判別することもできないため、不服の有無を判断することができないと指摘した。

 そうすると、その各更正通知書は、各更正処分の全体について、原処分庁の判断過程を逐一検証し得る程度の更正の理由の記載があるとは認められず、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という趣旨目的を充足する程度に具体的に更正の根拠を明示したものと評価することはできないから、各更正処分は、その理由の提示に不備があり、違法と判断して、原処分庁の各更正処分及び各賦課決定処分の全部を取り消している。

(令和5年12月15日裁決)