課税売上高が1000万円以下でも課税事業者になる場合

 消費税には事業者免税点制度が設けられており、基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除される。この課税売上高は、輸出取引なども含めた消費税の課税取引の総額から返品を受けた金額や売上値引き、売上割戻しなどを差し引いた金額で、消費税額と地方消費税額は含まないこととされている。

 ただし、その課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となる。特定期間とは、個人事業者は、その年の前年の1月1日から6月30日まで、法人は、原則、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヵ月の期間をいう。なお、特定期間における1000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできる。

 また、2023年10月1日以降、適格請求書発行事業者として登録を受けた事業者については、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の納税義務は免除されない。ただ、小規模な事業者に対する負担軽減措置として、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けて課税事業者となった場合に、適格請求書等保存方式の開始から3年間、その納付税額を売上税額の2割とすることができる経過措置(2割特例)などが措置されている。

 なお、課税事業者が、高額特定資産や自己建設高額特定資産の仕入れ等を行った場合は、その仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から一定の期間について、事業者免税点制度および簡易課税制度の適用が制限される。高額特定資産とは、棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、その対象資産の一の取引の単位に係る課税仕入れに係る支払対価の額の税抜金額等が1000万円以上のものをいう。

 自己建設高額特定資産とは、棚卸資産および調整対象固定資産のうち、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設、制作または製造したもので、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の税抜金額、特定課税仕入れに係る支払対価の額及び保税地域から引き取られる課税貨物の課税標準である金額の合計額が1000万円以上のものをいう。