22年度の全国平均借入金利0.98%、15年ぶりに上昇

 日本銀行による量的緩和、マイナス金利政策の継続により、企業の平均借入金利は引き続き低水準で推移している。ポストコロナで企業の資金需要は拡大し始めたものの、貸出競争から利ざやが減少する地域金融機関は少なくない。春には新型コロナ関連融資の返済スタートの最後の山場(民間ゼロゼロ融資・4 月)を控えている。こうしたなかで、マイナス金利政策の解除観測が高まり、いよいよ「金利のある世界」を迎えようとしている。

 帝国データバンクが発表した「全国平均借入金利動向調査」結果によると、2022年度の企業の平均借入金利は0.98%となった。前年度から0.01ポイント上昇し、15年ぶりの上昇。2007 年度(2.33%)をピークに2021年度まで14 年連続で低下していた。特に2020年度は新型コロナ関連融資がスタートしたことで、実質無利子・無担保での融資が急拡大し、0.26ポイントの大きな下げ幅を記録した。

 都道府県別にみると、最も平均借入金利が低かったのは「奈良県」の0.66%。以下、「香川県」(0.68%)、「島根県」(0.77%)と続く。新型コロナの影響拡大前の2019年度と比較すると、全ての都道府県で平均借入金利は低下した。また、利子補給制度の違いが都道府県間の差となった要因の一つとみられる。

 民間金融機関による新型コロナ関連融資は、融資実行段階から無利子となる「リアルタイム方式」と、事業者がいったん利子額を支払った後に自治体から支払った利子額が支給される「キャッシュバック方式」があり、「奈良県」、「香川県」、「島根県」はいずれもリアルタイム方式だ。利息負担のない借入金の増加は平均借入金利の大幅低下につながってきたが、ポストコロナに向けて上昇局面に入りつつある。

 2022年度は、マイナス金利政策が続くなか、企業への貸出金利は低く抑えられていた。従来の貸出競争のほか、新型コロナ関連融資の利子補給制度の方式の違いによる影響がみられた。昨年4月の日銀総裁の交代で金融政策の修正観測が高まったが、これまでの総裁の発言は“地ならし”との見方が多く、新型コロナ関連融資の返済が進めば結果的に金利の上昇圧力にもなり、2023 年度以降は平均借入金利がさらに上昇する可能性が高い。