大部分の給与所得者は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するので、確定申告の必要はない。しかし、給与所得者であっても、住宅ローン控除、医療費控除などの適用を受けるためには確定申告をする必要がある。自己または自己と生計を一にする配偶者とその他親族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができる。これを医療費控除という。
医療費控除の対象となる医療費のなかで判断に迷うものの一つに入院に伴う一般的な費用がある。入院費用のうち、(1)入院に際し寝巻きや洗面具などの身の回り品を購入することがあるが、これは医療費控除の対象にならない。(2)医師や看護師に対するお礼は、診療などの対価ではないから医療費控除の対象にならない。(3)本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象にならない。
さらに、(4)付添人を頼んだときの付添料は、療養上の世話を受けるための費用として医療費控除の対象となるが、所定の料金以外の心付けなどは除かれる。また、親族などに付添料の名目でお金を支払っても控除の対象にならない。(5)入院中は病院で支給される食事を摂ることになり、これは、入院代に含まれるので医療費控除の対象になるが、他から出前を取ったり外食したものは、控除の対象にはならない。
注意事項としては、健康保険組合などから支払われる高額療養費や生命保険契約などの特約により支払われる入院費給付金などを受け取っている場合は、その金額を支払った医療費から差し引かなければならないことがある。なお、医療費を補てんする金額が確定申告書の提出までに確定していない場合は、その補てんされる金額の見込額を支払った医療費から差し引く。
また、入院に係る費用を補てんする入院給付金の額は、その給付の目的となった入院に係る医療費の額から差し引くことになっており、引ききれない金額が生じた場合であっても、他の医療費の額から差し引く必要はない。