貸金返還債務の遅延損害金の必要経費算入時期で裁決

 審査請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した貸金返還債務の遅延損害金の額について、原処分庁が、遅滞していた日が過年分に属する日に係る遅延損害金については必要経費に算入できないとした更正処分等を巡って、国税不服審判所は、貸金返済債務の遅延損害金支払債務は、弁済期を経過した日以後、日々経過するごとに必要経費に算入すべき金額が確定すると裁決した。

この事案は、原処分庁が、必要経費に算入できる遅延損害金は、貸金返還債務の履行を遅滞していた日がその各年分に属する遅延損害金に限られ、遅滞していた日が過年分に属する日に係る遅延損害金については必要経費に算入できないとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、本件の遅延損害金は分割払の合意をしているから支払った日の属する年分の必要経費に算入すべきであるとして、原処分の一部の取消しを求めたものである。

 請求人は、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、その弁済の時期や金額等の借主と貸主との合意内容によってその確定時期が左右され、分割払の合意がされた場合は、遅延損害金の必要経費算入時期は、支払った日の属する年となることから、未払遅延損害金の分割払の合意に基づき支払った金額は、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額である旨主張した。

 しかしながら裁決は、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、(1)債務自体は弁済期を経過した時点で成立するものの、(2)その元本の弁済がされるまで遅滞が積み重なることで日々給付の金額が増加するので、各日ごとに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しており、(3)遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37-2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》の要件を全て満たすと解するのが相当と指摘。

したがって、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となり、その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額となるのであって、過年分に発生した遅延損害金支払債務について、弁済時期等の合意がされても、その確定時期は左右されず、弁済した年分の必要経費に算入することはできないと判断した。

(2023年3月23日裁決)