法人消費税調査、追徴税額は過去最高の1357億円

 消費税還付申告法人に対する税務調査が大きな成果を上げている。これは、国税庁が先日公表した2022事務年度の法人税等の調査事績により明らかとなったもの。コロナの影響による調査事務量が緩和されたことから、法人税調査件数も約52%増と大幅に増加したなか、消費税還付申告法人への追徴税額が過去最高となった。国税庁のまとめによると、2022事務年度に実施した法人消費税の実地調査は6万1千件(対前年比52.2%増)行われた。

 このうち3万5千件(対前年比44.3%増)から何らかの非違が見つかり、1357億円(同56.2%増)を追徴。追徴税額は調査を公表している1991事務年度以降で最高額となった。消費税還付申告法人についてみると、5810件(同36.6%増)に実地調査を実施し、このうち931件の不正を含む3588件(同24.7%増)から非違が見つかった。これによる追徴税額は前年比51.5%増の563億円(うち不正還付は138億円)と大幅に増加した。

 消費税還付申告法人についての追徴税額563億円も過去最高額となっている。以上のように、法人消費税の実地調査は、追徴税額は過去最高となったが、1件当たりの追徴税額では前年比2.7%増の223万円と微増した。一方で、不正計算があった件数は同38.5%増の1万1千件、その追徴税額も同26.2%増の390億円と大幅増加したが、不正1件当たりでは同▲8.9%の372万円と減少した。

 消費税不正還付の主な手口は、国内で架空仕入れを計上するとともに、免税となる国外への売上を架空計上し、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を控除するとマイナスになることを利用して還付を受けるもの。国税庁では、法人から税務署に提出された消費税還付申告書について、申告内容に応じて、還付事由の確認のため還付金の支払手続きを保留した上で厳正な審査を行い、行政指導や実地調査を行っていく方針だ。  調査事例では、国内売上を免税売上に仮装したものがある。輸出物品販売場を経営するA社は、外国人旅行者に対して高級腕時計を多数販売(免税)したとして、多額の消費税還付申告書を提出していた。実地調査を行ったところ、A社は消費税の還付金を不正に受領するため、国内売上をブローカーが用意した協力者(非居住者)に対する免税売上に仮装している事実を把握。A社に対しては、重加算税を含む追徴税額約11億円が課されている。