内閣府は、2023年度の最低賃金引上げの内容について都道府県別に確認するとともに、アルバイト時給や景況感への影響について考察したレポートを今週の指標として公表した。それによると、2023年度の最終的な地域別最低賃金額が決定された結果は、2023年10月から最低賃金が、全国加重平均で目安を上回る1004円(前年差+43 円、上昇率4.5%)となるものだった。最高額は東京都の1113円、最低額は岩手県の893円だった。
今回の都道府県別改定では、Cランク地域のほとんどの県と、Bランク地域の3分の1強の県で目安額を上回る最低賃金額が決定され、地方部の上昇幅が大きくなっていることが大きな特徴となっている。全国加重平均は、2020年度を除き近年着実に上昇傾向が続いていたが、その中でも2023年度の伸びは過去最大の引上げ幅となり、初めて1000円を超えた。
こうした最低賃金額の引上げが、アルバイトの賃金にどのように影響を及ぼすか、2022年度の引上げを例にとって検討している。2022 年10月も全国加重平均の最低賃金は3.3%引き上げられた。具体的な事例として、2022年4月を起点とした各地域のコンビニ(小売)のアルバイト時給の推移をみると、最低賃金引上げ時に、全地域で時給は大きく上昇し、その後も緩やかな上昇が続いている。
この時の各都道府県の最低賃金上昇率を横軸、アルバイト時給(コンビニ)の上昇率を縦軸に、分布をプロットすると、最低賃金引上げがアルバイト賃金を押上げる関係性が観察される。この時の両指標の関係性をみると、全国的には四半期内の押上げ率は67%程度となる。これを踏まえると、2023年10月の最低賃金引き上げ(全国加重平均+43円、上昇率4.5%)は、年内に、アルバイト時給を平均で3%程度押上げる見込みと推計される。
最後に、「景気ウォッチャー調査」結果も確認すると、景気の先行きに対する回答で、「最低賃金」というキーワードを含むコメントの数は、7月調査から8月調査にかけて倍増。また、「最低賃金」というキーワードを含むコメントDIは、景気の先行き判断DI(全体DI)と比べて水準としては低いが、7月調査から8月調査にかけて10ポイント程度改善しており、全体DIとの差は小さくなっている。
以上をまとめると、レポートは、「最低賃金の引上げはアルバイト時給の押上げ効果を持ち、景気ウォッチャーからは消費への好影響を期待するコメントもみられるようになってきた。一方で、人件費高騰を警戒するコメントもみられる。こうした懸念を払拭するためにも、最低賃金引上げによる人件費増加に応じた販売価格への転嫁とビジネスモデルの変革等を通じた企業としての生産性向上が進むことが期待される」としている。
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